優れた営業戦略立案方法。5つのステップとフレームワーク

営業戦略は、営業における目標達成のために重要な施策です。企業の売上向上や事業拡大のためには、最適な営業戦略を立てる必要があります。この記事では、営業戦略と混同されやすい営業戦術との違いや、良い営業戦略の具体的な立て方について紹介しています。「営業戦略という言葉は聞いたことがあるが詳しく知らない」「売り上げを向上させる営業戦略の立て方を知りたい」という営業チームのリーダー・マネージャーの方は、ぜひお読みください。

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営業戦略の立て方とは?戦略立案法4つのステップとフレームワーク

営業戦略とは

まずは「そもそも営業戦略とは何か」を正しく理解しなければいけません。
営業戦略とは、簡単に言うと営業目標を達成するための計画で、売上や利益の獲得、シェアの向上などを実現するための計画や行動指針を指します。人や資金、時間といった自社の営業リソースを効率よく活用し、効果的に利益目標を達成するために作戦を立てていくのです。

営業におけるゴールと方向性を定め、「どんなターゲット層にどの商品を、いつまでにどれくらい販売するか」という目標達成のための要素を、ひとつずつ決定していきます。また、市場シェアに影響するブランディングも、営業戦略のひとつです。

なぜ営業戦略が必要なのか

目標を達成するための手段は1つではありません。そして、人によってどの手段を選ぶかは異なります。売上アップという目標に向かって、ある人は商品に付加価値を付けて粗利を上げるかもしれないし、ある人は粗利を下げて薄利多売を狙うかもしれません。目標があっても営業戦略(計画)がなければ、各個人がバラバラに行動してしまうのです。これでは、統一性がなく最善の結果は望めません。
より良い成果を上げるにはチームの方向性を決めることが重要。そのために営業戦略が必要なのです。

営業戦略と営業戦術の違い

一方、営業戦術は、営業戦略を達成するための具体的な手段や方法のことを指します。地図に例えると、目的地が営業戦略(計画)、目的地までのルートが営業戦術(手段)といったところでしょうか。営業戦略は「企業全体や組織における長期的なゴールや方針」であるのに対し、営業戦術は「営業チームとメンバー個人が中短期的に達成する目標」と区別することができます。

戦略で立てたプランを、営業チームやメンバーが実行していくために、戦術を練っていきます。そのため、営業戦術は営業戦略よりも具体的でなければいけません。企業ごとに違いはありますが、多くの場合「今月中に既存顧客50社を訪問して課題をヒアリングする」というように、いつ・誰に・どうやって・何をするのかが細かく設定されます。

営業戦略を実現するための戦術はひとつとは限らず、使えるリソースや市場の状況などと照らし合わせて、適切な戦術を構築することが重要です。
優れた戦略があっても、戦術が乏しいと目標達成が難しく、立派な戦術を持っていても、使うに値する戦略がなければ不発に終わってしまいます。両方をバランスよく、自社と営業チームそれぞれに最適な形に仕上げることが重要です。

良い営業戦略とは

営業戦略を立てるにあたり、そもそもどのような営業戦略が「良い営業戦略」なのか、理解しておく必要があります。 良い営業戦略とは、「選択・集中・差別化(3S)が明確」な戦略を言います。本当にやるべきことが「選択」されていて、「集中」的に取り組め、かつ他との「差別化」が確立されていることを意味します。逆に、「網羅的・分散・模倣的」な戦略を用いて目標達成することは極めて難しいでしょう。営業マネージャーには、メンバーの戦略実践度を定期的にチェックし、3Sが徹底されるようマネジメントすることが求められます。

勝者の3S、敗者のMBM

営業戦略立案 5つのステップ

ここからは、チームを成長させるために効果的な「良い」営業戦略の立て方を順を追って説明します。

戦略検討簡易マップ

ステップ1:環境分析

まず、自社の商品・サービスが置かれている環境を分析します。成果が出る営業戦略の立案のために、業界やマーケット、クライアント層など必要な情報を収集することが環境分析の目的です。

外部環境分析

“まず、自社の商品・サービスが置かれている環境を分析します。成果が出る営業戦略の立案のために、業界やマーケット、クライアント層など必要な情報を収集することが環境分析の目的です。

自社の現状把握

外部環境が理解できたら、次は自社の現状把握です。市場のなかで自社がどのような立ち位置にいるのかを分析し、営業活動の実績を把握します。
営業活動については組織・個人を問わず確認します。顧客や商品、客単価、チャネル・ターゲット層ごとの売上、成約率や契約数の伸び率、営業活動の傾向やプロセス、個人別の訪問数や成約数など、ありとあらゆる情報をもれなく拾い上げていきましょう。冷静で客観的な視点を持って、自社の現状を見つめ直すことが必要です。

営業課題の発見

自社の現状が把握できたら、次は営業活動における課題や問題点を探っていきます。ここまでの過程をたどれば、課題や問題点を明確化することは決して難しくありません。
社会情勢や市場動向などで変化するターゲット層に合わせた営業活動ができているのか、限られた経営資源(人・モノ・金・情報・時間)を有効に活用できているか、さらに効率化できる業務はあるかなど、多角的な視点が必要です。また、データだけに頼るのではなく、個人へのヒアリングも行いましょう。現場の生の声を拾い集めることで、新たに見えてくるものがあります。

コアコンピタンスの把握

外部環境、自社の現状、営業課題のほかに、営業戦略の立案に必要な情報は「コアコンピタンス」です。コアコンピタンスは「他社にはない自社だけが持つ強み」のこと。コアコンピタンスがあれば、他社に圧倒的な差をつけることができ、営業戦略を立てるうえで重要な要素となります。
必要があれば他部署にもヒアリングし、自社のコアコンピタンスが何かを考え抜いてください。もし「これといった強みがない」という結論に達した場合は、今後の課題として、コアコンピタンスを新たに作りだすことを検討しましょう。

ステップ2:ポジショニングの決定

次に、どういったマーケットでどのように戦うか、あるいはどのようなリソースを投下するか「ポジショニングの決定」を行います。組織が持つリソースや活動方向を適切に活かせるポジションニングを決定することが重要です。

ステップ3:顧客セグメンテーション

営業先の顧客のターゲティングを行う「顧客セグメンテーション」も、営業戦略の中で重要なタスクのひとつです。基本的には、顧客のポテンシャル(直接的・間接的な観点)と取引難易度(既存顧客・新規顧客)の2つを掛け合わせ、顧客の選定を行います。

ポテンシャルと取引難易度の掛け合わせ

ステップ4:商品・サービスの決定

クライアントが絞れたら、顧客の課題と自社による提供価値がマッチングする商品・サービスを決定します。顧客の課題にはさまざまな特徴が見られるので、それぞれを分析、統合して把握することが大切です。
商品やサービスの決定と同時に、最適な商品戦略についても選定します。商品・サービスがマッチするクライアントに営業をかける標準化戦略と、顧客の課題に合った商品・サービスの提供価値を確定するカスタマイゼーション戦略という異なる2つの戦略を、状況に合わせて的確に使い分けます。

標準化戦略とカスタマイゼーション戦略

ステップ5:営業戦術の作成

目標=営業戦略が設定できたら、実際の行動=営業戦術に落とし込みます。営業戦略よりもさらに具体的に「誰が、いつまでに、どうやって、何をするのか」まで細かく設定することが大切です。
手段としては、飛び込み営業やテレアポなどの営業活動のほか、印刷物の配布、展示会やセミナーの開催、WEBやメールなどIT技術の活用、FAXなどが考えられます。さらに、直接の営業活動ではなくとも、目標達成に必要なノウハウを共有する勉強会を開くなども戦術として考えられるでしょう。

また、戦術は必ずしも1つとは限りません。例えば「売上を50億円増やす」という目標を設定した場合、既存顧客を相手にする場合と新規顧客を開拓する場合では手段が異なります。相手や状況に応じた戦術を立てることが大切です。

戦略立案に役立つフレームワーク

ステップを理解したとしても、それぞれをイチから検討するのはなかなか難しいもの。そんなときにはフレームワークを活用することが有効です。ここでは、戦略立案のステップに合わせた、戦略立案に活用できるフレームワークを紹介していきます。

環境分析に役立つフレームワーク

外部環境分析

・PEST分析
PEST分析は、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」という4つの観点から、外部のマクロ環境を把握する方法です。自社ではコントロールできない要素をマクロレベルで分析することで、自社が対処すべきピンチと活用すべきチャンスを洗い出します。

・W3C分析
3C分析は「Customer(市場・顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」の分析を通して競合に対する優位性を把握するためのフレームワークです。
営業戦略立案にあたっては、顧客の3C、自社の3Cを組み合わせたW3Cを分析することで、顧客の課題と自社の競合他社に対する自社の優位性を把握し、戦略の立案に活かしていきます。

PEST分析と3C分析

自社の現状把握

・SWOT分析
ここでもフレームワークを活用しましょう。特に、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の頭文字から名前がついたSWOT分析が、自社の状況や整理・分析に役立ちます。

ポジショニングの決定に役立つフレームワーク

・アンゾフマトリックス
商品・サービスの提供価値とターゲット・市場、新規と既存という4つの視点それぞれの戦略を分析するフレームワークです。
アンゾフマトリックスは、新規と既存のマーケットで既存商品を販売する場合はアップセル、既存商品を新規市場に持ち込む場合はクロスセル、といった具合にそれぞれの場所で求められる異なった戦術を4象限で表現します。

アンゾフマトリックス

顧客セグメンテーションに役立つフレームワーク

・利益貢献度分析とパレート分析
売り上げ貢献度や利益貢献度を用いた分析⼿法を通して、両方の度合いが⾼い顧客にリソースを投⼊し、営業活動を⾏います。特に利益率が高いクライアントは、十分なポテンシャル分析と関係づくりが重要です。新規顧客に対しては、収集した顧客情報からポテンシャル分析を行い、優先順位をつけて営業活動をします。

利益貢献度分析とパレート分析

営業戦略を成功させる上でのポイント

これまで営業戦略の立案方法について説明してきましたが、ここでは、営業戦略を成功させるための3つのポイントを挙げていきます。

戦略はなるべくシンプルなものに

「営業戦略は全員が覚えやすいシンプルなものにする」これが最初のポイントです。考えなければ理解できないような営業戦略では誤解やブレが生じ、実効性にも疑問符がつきます。長々とした文章や分かりにくい文章は避け、抽象的な表現ではなく数値目標を盛り込み、内容がストレートに伝わるようにまとめましょう。
営業戦略は全員が実践してこそ意味があります。考えさせるのではなくシンプルに目標を伝える、それが効果的な営業戦略を立てるコツです。

KPIを細かく設定した上で定期的な進捗確認

次のポイントは、定期的に進捗を確認することです。営業戦略は立案してそれで終わりではなく、継続的にメンテナンスが必要です。KPIを設定して進捗状況を確認し、必要があれば軌道修正をしなければいけません。
「KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)」は、目標の達成度を数値化するもので、訪問件数や受注件数、リピート率、市場シェア率などさまざまな指標があります。営業戦略に沿った指標を設定し、目標達成に向けて正しい方向に進んでいるか、結果が出ているかを定期的にチェックしてください。

定期的な見直しと改善

最後のポイントは、営業戦略を定期的に見直すことです。
KPIを設定して進捗確認を行うとともに、Plan(計画)・ Do(実行)・ Check(検証)・ Action(改善)のPDCAサイクルを使用して効果を検証し、目標との乖離を早期に把握しましょう。そして、目標の達成が難しい、もしくは望む成果が得られていないことが明らかであれば、必要に応じて営業戦略の見直しと改善を行います。
重要なことは、PDCAサイクルを短く細かく回すことです。こまめに効果を検証することで問題を早期発見できるだけではなく、成果を実感することもでき、モチベーションアップにつながります。

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この連載の監修者

茂木 慎司

茂木 慎司 顔写真

株式会社シー・ブリッジ・コンサルティング 代表取締役。1985年、慶應義塾大学法学部卒業。同年、株式会社リクルート入社。 企業の人材採用支援事業に配属。特に国内を代表する超大手企業の「新卒・中途採用」のプランニングから実行支援を中心に担当。その後、 複数のマーケティング支援事業の責任者を歴任。同時に企業の「営業組織強化コンサルティング事業」の新規立ち上げを担当。2005年に独立し、現在は主に「企業の営業組織力強化およびそれに付随するマネジメント強化」のコンサルティングサービスを提供している。

茂木慎司

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