ナレッジの発信と活用

効果的な営業のナレッジマネジメントとは?知識の共有と発信のシクミ作り

私が新人営業時代、「大したことではないんですが…こんな資料を持っていったらお客様から喜ばれまして…」とチーム会議で、なけなしのトピックスを発表すると、私の上司が「お前、それいいぞ!この後の営業部会で発表しろ!」と背中を押してくれたことがあった。
言われた通り部会で発表すると、想像以上の反響で、次の日から多くの人が営業鞄にその資料を入れ始め、なんと営業課長や部長も持ち歩いているではないか!
何十年前の話なのに、嬉しくて今でも覚えている。

効果的な営業のナレッジマネジメントとは?知識の共有と発信のシクミ作り

そう、ナレッジ“マネ”ジメントとは、単にナレッジを蓄積することではなく、それが“マネ”されてナンボなのだ!
優秀な営業リーダーは、有効なナレッジを持つメンバーにその情報発信を動機づけ、そのノウハウをマネするように促す「シクミ」と「シカケ」を講じている。今回は、そのポイントについて考えていこう。

ナレッジが必要な旬なテーマをピンポイントで意識づけよ!

第1回のコラムでも述べたが、ここでは「シクミ」を意識づけ策、「シカケ」を動機づけ策と定義している。そのシクミとシカケを上手く駆使しながら、チームを動かしていくことが営業リーダーには求められる。
では、今回のテーマであるナレッジマネジメントにおける、シクミづくりとは何か?一般的には、ナレッジを蓄積し、閲覧するシステム、検索性を高めるシクミなどを想像するかもしれない。しかし、そのようなことを整える前に、営業リーダーとしてやるべき意識づけ策(シクミづくり)がある。

それは、「今は、このテーマについてのノウハウ、知恵が必要だ!」とチーム全体に意識づける策(シクミ)を構築することだ。
例えば、新商品の営業場面で、お客様から「特に困ってないよ」言われた時の対処策が分からず、停滞しているメンバーが多いとしよう。
そんな時の簡単なシクミづくりとしては、月例の営業チーム会議で、「今月のナレッジ募集コーナー」を設置して、「初回訪問時の動機づけトークを募集する!」とテーマ設定すればいいのだ。
他にも、メンバーが提案書の作成に苦労している場合には、「〇〇テーマの提案書で使うお客様の課題ページを募集!」というテーマ設定している事例もある。
提案書全部ではなく、あるテーマの“お客様の課題を整理しているページだけ”を集めよう!と呼びかけているのだ。テーマが非常に絞り込まれていることがポイントだ。

つまり、優秀な営業リーダーは、

  • 「ココがツボだろ!」というナレッジすべき旬なテーマをピンポイントで見極め、
  • ノウハウを持つメンバーに、発信してほしいテーマを意識づけ、
  • 苦労しているメンバーには、「君たちが困っているのは、ココだよね」と、習得してほしいテーマを常に意識づける、

そういった「シクミ」を構築しているのだ。

ナレッジの発信と活用を動機づけよ!

営業チームにとって、旬なテーマが設定された次は、そのナレッジの発信と活用を動機づける「シカケ」を考えることだ。「シクミ」を作っても、そこに気持ちが入らないと空回りしてしまう。
ただ、そんなに難しく考える必要はない。
ナレッジを発信してくれた人、ナレッジを上手く活用して成果を出した人が、「あなたはエライ!」と、ちゃんと褒められる風土をつくることがポイントだ。

私が以前勤めていたリクルート社のある部署では、営業ナレッジを発信し、その内容が他の人にもマネされその有効性が認められると、その人の名前が冠として付けられて、部署全体に広報されるシカケをつくっていた。
「A子の〇〇営業」「B君の3年契約営業」と言った感じだ。

図版

ナレッジ提供者にとっては、自分のアイデアが市民権を得たことになり、一時的に金銭的なインセンティブをもらうよりも、よっぽど強力な承認賞賛感を得ることになるのだ。

他の会社では、TTP賞(徹底的にパクったで賞)という表彰制度をつくり、人のアイデアを活用して成果を出した人を褒めている。つまり、ナレッジがマネされて、磨かれていく風土づくりをしているのだ。

多額の費用を掛けたり、手の込んだことをやらなくてもいいのだ。営業リーダーであるあなたが考えるシクミづくり、シカケづくりで、メンバーの顔が晴れやかになり、営業チームに活気がでてくる。
ぜひ、身近なところから、チャレンジしてほしい!

イラスト:室木おすし

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この連載の著者

亀田コーチ(亀田 啓一郎)

亀田コーチ 顔写真

株式会社プロジェクトプロデュース 代表取締役。神戸大学工学部卒業後、リクルートに入社。法人向け新規開拓営業に従事後、販促企画やナレッジマネジメントなどの営業支援を担当。リクルートマネジメントソリューションズでは、営業研修や営業組織強化のワークショップ設計に従事。2006年に独立起業。営業、販売、接客などの顧客接点部門の組織開発プロジェクトを数多く手がける。

亀田啓一郎

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