営業リーダーの心構え
信頼できない上司の特徴として、「言うことがコロコロ変わる、一貫性がない」が、部下へのアンケートで上位にランクインするキーワードだ。つまり、言動にブレあると部下からの信頼感が低下するという事だ。今回は連載最終回として、営業チームを率いるマネージャーやリーダーとしてブレない軸を持つための心構えについて解説する。
誰でも決められたルール通りに進めば楽だ。でも仕事をしていると、ルールに当てはまらないケースがいくつも出てくることは、みなさんもご存知のとおりだ。
例えば、値引き販売はしないというルールを決めていたとしても、大型商談を競合会社に取られてしまう、長年お付き合いしてきたお客様だから、「特例として認めて欲しい」と言った要望が営業メンバーから出てくることはよくある。
このように想定外なケースには答えがない。その答えがない場面でどんな判断をして答えを出すのか、そこを部下は見ている。
判断基準とは、判断する時の拠り所としている考え方だ。
「この場合は、値引きは認める」と回答するとしたら、そこには理由があるはずだ。
例えば、
などなど。
ただ、この判断理由がその都度変わってしまう人は、その拠り所とする考えが定まっておらず、ブレていると思われてしまうことが多い。
あるベンチャー企業の社長が、次のようなことを仰っていた。
「自分が重要な意思決定をする時、直感的に答えはでているが、それをすぐ伝えるのではなく、その意思決定理由を書き出すようにしている。ほんの5分~10分くらいの作業だが、とても重要な思考習慣にしている」
その意図は、意思決定理由は妥当性か、これまでの判断基準と照らして一貫性があるかを、改めて確認する時間をとることにあるそうだ。
ブレない軸を磨くために、このベンチャー企業の社長のように、客観的に確認する時間をとることも有効なやり方だ。一方、営業現場を預かる皆さんには、別の観点からお勧めしたいことがある。
それは、意思決定の場数を踏むことだ。
優秀な経営者は、ブレないマネジメント軸を持ち、即断即決をしている様に見える。ただ、それは一朝一夕にそうなったわけではない。それまでに難しい判断を求められる意思決定を何度も行ない、時には手痛い失敗もしながら、鍛えられてきたプロセスがある。
値引きの例でも言えることだが、営業リーダーやマネージャーの職責では、意思決定のレベルを超えているケースが多々あると思う。その際に、自分で判断する思考を止めてしまい、上司に意思決定を丸投げしてしまう人がいる。なぜなら、その方が楽だからだ。
でも、それは非常にもったいないことをしている。
最終的には自分だけでは決められないにしても、自分だったらこの判断理由で、このような意思決定をするという結論を出すことはできる。
その絶好の訓練の機会を逃しているのだ。
上司に具申するにしても、自分なりの意思決定理由と結論も一緒に伝えればよい。もちろん、却下されることもあると思うが、上司が下す判断理由を確認することで、その思考は磨かれていく。
自分で何かを決めてチームメンバーに下ろすことは、重い責任が生じるし、労力がかかる作業だ。でも、このような意思決定作業から逃げずに場数を踏むことで、自分のマネジメント軸が磨かれて明確になっていくのだ。
<謝辞>
全50回にわたる「強いチームのつくり方」についてのコラム、最終回までお付き合い頂き、心より御礼申し上げます。
営業マネージャー、営業リーダーの仕事は大変なことも多いと思いますが、その関わり方一つで、チーム業績やメンバー育成に大きく貢献することができるやりがいのある仕事です。
そのような皆様にとって、少しでも役立つヒントになっていたら嬉しく思います。
読者の皆様のさらなる飛躍を心よりお祈り申し上げます。
亀田 啓一郎
イラスト:室木おすし
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