部下育成のPDCAサイクル

営業メンバー・部下に効果的な「育成PDCAサイクル」の回し方

そもそもPDCAとは、物事を実行しながら継続的に改善していく考え方だ。
Plan→Do→Check→Actの頭文字の略で、図で示すようなサイクルを回しながら、らせん階段を上るように改善を進め、実行の精度を高めていく考え方である。
人材の能力強化という観点でも同じように考えることができる。今回は、部下の成長を促すための「育成のPDCA」について解説する。

営業メンバー・部下に効果的な「育成PDCAサイクル」の回し方

部下育成のPDCAサイクルを回す際の落とし穴

ありがちなPDCAサイクルの落とし穴は、PlanとDoは一応するが、CheckとActが中途半端にしか行われないことだ。これは部下育成にもあてはまる。
部下と共に育成計画(Plan)を立て、実行(Do)を促したものの、実践結果の検証(Check)は半年後の面談時にざっくりと行われ、更なる改善策(Act)についてはほとんど言及されずに、別の新たなテーマで課題設定されることが多い。
つまり、育成のサイクルがつながっていないのだ。

部下育成のPDCAサイクルの回し方

Plan(育成計画)については、
「部下育成で「放置」は厳禁!本人任せにしない効果的な育成計画の考え方」を参照して欲しい。
ここでは、その後のDo(実行実践)部分とCheck & Act(振り返りと改善)の部分における、部下への働きかけ方について解説しよう。

PDCAサイクル

PDCAサイクル

Doのポイント:部下が商談に臨む前にフィード・フォワード面談を実施せよ

実践実行するのはあくまでも部下だ。そこで重要なのは、部下本人が育成テーマを意識して実践することだ。
例えば、他部門と連携して大手企業から大型商談を獲得することが育成テーマであれば、商談に臨む前に、そのテーマに則した営業活動を部下にイメージさせて、意識づけることが営業リーダーの役割だ。

例えば、
「A君、今日のアポは大手企業の○○商事だね。まさに他部門の商材も取り入れた複合提案のチャンスだと思うけど、どんなニーズを想定しているの?」
【仮説の確認】

「なるほど、そのニーズはどんな情報をもとに考えたの?」
【仮説の根拠、着眼点の確認】

「そのニーズをどうやって聞き出して、こちらの商材提案につなげるつもりなの?」
【具体的なやりとりの確認】

このように、事前に部下に問いかけ実践イメージを確認し、もしズレがあればアドバイスをする「フィード・フォワード面談」をおすすめしたい。

Check & Actのポイント:商談後に結果の良し悪しの確認だけでなく、学びと教訓を考えさせよ

Check & Actは、まさしく結果の振り返りと今後の改善策を考えることなのだが、実態は、結果の確認と次の打ち手を指示しているだけになっていることが多い。

例えば、
営業リーダー「A君、○○商事のアポはどうだった?」
部下A君「いやあ、想定と違って全く想定外の課題が出てきたので、うまく営業できませんでした…」
営業リーダー「だったら、この事例を持って、もう一度アポを取り直して行ってみろ」
これでは、振り返りにも、学びにもなっていないやり取りだ。

部下本人が、この経験から学び成長するためには、以下のような2つのポイントを踏まえた働きかけが必要だ。

【ポイント1】うまくいかなかった(うまくいった)要因分析

  • なぜ、当初の想定からズレたのか?
  • お客様から出てきた別のニーズは、どこに着眼しておけば想定できたのか?
  • 想定外のニーズが出てきた時に、対応できなかったのは何故か?

【ポイント2】この経験からの学び、教訓の確認

  • 今後、大手企業に行く場合には、事前にどんな情報収集をして、どんな準備をしておけばいいのか?

このような振り返りを行い、今後の改善点を確認する面談を、フィード・バック面談という。

「育成のPDCAサイクル」を回すためには、育成テーマにつながる場面を具体的にとりあげ、事前のフィード・フォワード面談と、事後のフィード・バック面談をこまめに部下と行うことが重要なのだ。

イラスト:室木おすし

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この連載の著者

亀田コーチ(亀田 啓一郎)

亀田コーチ 顔写真

株式会社プロジェクトプロデュース 代表取締役。神戸大学工学部卒業後、リクルートに入社。法人向け新規開拓営業に従事後、販促企画やナレッジマネジメントなどの営業支援を担当。リクルートマネジメントソリューションズでは、営業研修や営業組織強化のワークショップ設計に従事。2006年に独立起業。営業、販売、接客などの顧客接点部門の組織開発プロジェクトを数多く手がける。

亀田啓一郎

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