小山 聡章氏インタビュー恐れていたのは“失敗”ではなく“一歩踏み出す”ことだった!第一線で活躍し続ける営業マインドの極意

プルデンシャル生命保険株式会社のエグゼクティブ・ライフプランナーとして活躍し、 優績者のみに認められるMDRT会員資格の基準を何十年も連続で達成し続けるなど、今なお現役のトップ営業パーソンとして最前線に立つ小山 聡章氏。
そんな小山氏が歩んできたキャリアの中で学んできた、営業における考え方やそのスタンスなどについて詳しく語っていただきました。

小山 聡章氏

【1】大学受験の失敗から人生の逆転を目指す!居心地よりも自分の成長を

これまで歩んできたキャリアについて教えて下さい。

小山 聡章氏 大学卒業後は株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)へ入社し、企業内線電話サービスを販売する新事業部門に配属され、FAXの一斉同報サービスを販売する部署を経て、数年後にはボイスメールを扱う部署で初めて営業マネージャーを経験。
1998年には現在も籍を置くプルデンシャル生命保険株式会社に転職しました。

就職活動当時は商社や銀行からも内定をいただいていたのですが、たまたま高校時代の友人に誘われてリクルートでアルバイトをする中で、新規事業領域を次々と切り開く勢いそのままに、活気に満ちている雰囲気に魅力を感じ、リクルートを選択したのです。
実は、浪人したものの大学受験に失敗したという私なりの挫折を経験し、学歴とは無縁の、自分の実力で勝負できる場所で、人生を逆転したいという思いもあったのが正直なところです。

小山 聡章氏

未経験の生保業界に転職したきっかけはどんなことでしょうか。

小山 聡章氏 今思えば、自分で何か証を残したいという思いがあったのではないかと思っています。
実は転職する数年前に今の会社からアプローチいただいたことがあったのですが、その時はこの先もリクルートで働いた方が成長できると判断しました。
その後、経営者の集まる異業種交流会に参加させていただいた折、数年後を見据えて常にチャレンジし続ける経営者の覚悟に尊敬の念を感じつつ、激しく心が揺さぶられました。
そのことがきっかけで、100を1万にするよりも、ゼロを100にするということに挑戦してみたいという思いが強くなったのです。
ただ、本来なら自ら起業するという選択肢もあったはずですが、当時は力もないしアイデアもなかった。そんなタイミグで今度は別の方からお誘いをいただきました。
30代を迎えるにあたって、居心地のいい会社にずっといるよりも、違うステージに立つことで自分が成長できるのではと考えたのが転職の大きな理由です。

【2】やめようと思った途端、ギネス樹立!?営業現場で学んだ大切なこと

営業としてご苦労された経験について教えて下さい。

小山 聡章氏 リクルート1年目の時、思うように結果が出ず、気持ちだけ焦り、この仕事は自分には向いていないので会社を辞めようと決意したことがあります。
でも、人間分からないもので、最後のひと月だけは頑張ろうと思った途端、うまく転がり出すものです。当時はなかなかアポも入らず、会社に戻ればアポ取りしろと言われてしまうので、山手線をぐるぐる回っていた時期がありました。でも、1週間そんなことを続けていても現状が打開できるわけもありません。
そこで、最後真剣になって取り組んで、ダメなら辞めようと、毎日午前中1時間、午後1時間だけは自分の一番嫌いな“飛込み営業”をしようと決めたのです。

もちろんうまくいくわけもなく、ほとんどが門前払い。でも1週間経ったころ、普段応接室に通されることなんてないのに、なぜか通過できた会社があったのです。本当は受注せずとも、飛込みをしたという満足感だけでよかったのですが(笑)。
しかも、社内でも権限を持っている方がこられて「いつもお世話になっています」と私に挨拶するわけです。
実は、採用に関してリクルートの人間とアポイントが控えていたらしく、その人と間違えたというのが事の顛末なのですが、とにかくこのチャンスを絶対逃すものかと一生懸命説明しました。
すると、気迫が伝わったのか担当者を呼んでくれて、そのことがきっかけで部の売上ギネスになるような大型受注につながったのです。

小山 聡章氏

やめようと思っていたのに、まさかのギネスを記録するとは!

小山 聡章氏 そうなんです、やめようと思っていたのに(笑)。
でもこの時に学んだのは、自分から一歩踏み出さないと何も始まらないということ。断られても何も失うものはなく、単に足を一歩出すことを恐れていただけなんだと気付かされました。その経験で、何か壁だと思っていたようなものをポンと飛び越えた感覚があったのです。
それ以降、以前は断られると自分が否定されたような気になっていたのが、たまたまタイミングが合わなかっただけ、話を聞いてもらえるだけでありがとうございます、という気持ちになれるようになったのです。
そんな小さな事にくよくよせずすぐに次に移ればいいと割り切れるようになっただけでなく、どうして断ったのかの理由までお客さまにヒアリングできるようになったのです。偶然ではありますが、それは貴重な経験でした。

失敗から学ばれたことってありますか?

小山 聡章氏 新人だったリクルート時代に、あるお客さまに提出した提案書の導入費用の数字が誤っていたことがありました。実は、この提案書をもとにお客さまはグループ会社の方に説明したところ、その数字を1ヵ所間違えていたことで恥をかかせてしまったのです。
「あなたにとって、うちは数ある顧客の1社かもしれないが、あなたの話を聞いてグループ全体に展開しようと思っている僕の気持ちが分かってもらえず、裏切られた気分だ」と告げられたとき、信頼を積み上げていくのは時間がかかりますが、信頼が崩れるのは一瞬だということを悟りました。
ちょうど仕事がうまくいき始めた時期だったこともあり、慢心していた自分を反省しました。

小山 聡章氏

やはり信頼というのは大きいですね。

小山 聡章氏 売り切りの商売ではないし、人と人との関係があってこその仕事です。やってよかったと、その後も良い関係が続かなければいけないと痛感しました。
保険の仕事でもそうですが、実は初めてお会いさせていただく方でも、10分あれば保険を見直したほうがいいと思わせるのは容易い。
極端な話、すでにプルデンシャルの保険に入っている方に対しても、小山のプランのほうがいいと思わせることはできます。

でも、それでは、私がお客さまの横に寄り添って一緒に考えながら本当に正しい提案をしていることにはならない。本当は変えないほうがいい保険も結構あるのが現実なのですが、それをやってしまうのがこの業界。
お客さまに対してどういうスタンスで仕事をするのかが問われるわけで、本当にお客さまの立場になることができるかどうか、それが信頼感を醸成することにつながると考えています。

【3】そのやり方ではつぶれるだけ…質量転換の契機となったMDRT

KOYAMA通信
写真は小山 聡章氏が作成するKOYAMA通信。年に数回発行し、お客さまとの関係を継続しながら信頼を積み重ねている

人生における一番の転機は?

小山 聡章氏 世界中の生命保険・金融サービス専門職の中で一定基準を満たした人だけが集うMDRT(Million Dollar Round Table)の世界大会に参加したときのことでしょうか。会場で出会った世界のトップの方と話す機会を得て、ちょうど休暇の話題になったのです。
1年に1日しか休みを取らず、それを3年も続けていた私の状況を話したところ、「お前は絶対、来年ここにはいない。それではつぶれるだけだ」と彼から断言されたのです。
彼は年の初めに家族とバカンスの予定を組み、残りの時間で前年以上の結果を出すにはどうすべきかと戦略を立て、経営につなげていくということを実践していると教えてくれたのです。行動量に限界を感じていた私にとって大きな衝撃で、これまでのやり方を大きく転換するきっかけとなったのです。
先に休みを決めて働く時間を決める逆算方式で、その限られた時間で最大限のパフォーマンスを発揮するやり方も考えましたし、更に自分の提供できる価値を上げるためにも法人領域への展開も本腰を入れてやっていくきっかけにもなりました。

1年に1日しか休みをとっていないこと自体が驚きです。

小山 聡章氏 私は不器用ですし、客観的にみて営業センスが飛びぬけて高いわけでもありません。だからこそ、量をこなして走っていくしかないと思っていたのです。
転職した最初の3年は、会社のそばで仮住まいをし、妻にも最初の3年間は休みなしで頑張らせて欲しいとお願いしたほどです。
でも、さすがにそれも限界があることを、そのMDRTの大会で学びました。

ただ、この話について紹介した書籍を出版したときに、とある社長に読んでいただいたのですが、すごいと言われると思ったら、「休みなしの生活をたった3年しかやってないの?経営者ならこんな事当たり前だよ」なんて返されてしまった。まさに経営者のすごみを感じましたね。
そういう意味では、名刺や机を用意していただいて、開業資金も準備することなくチャレンジできている自分は恵まれているなと改めて実感したものです。

書籍「トップ営業のお客様から『教わる力」
2011年に上梓された小山 聡章氏の「営業人生25年」と志が詰まった著書。

ほかにもご経験の中から学ばれたことはありますか。

小山 聡章氏 リクルート時代、短期的な目標として早くマネージャーになりたい、年収を上げたいという思いは私も持っていました。同期が800人ほどいましたが、仕事も順調で人事査定もよく、一番マネージャーに近い位置にいると正直思っていました。
でも、現実は私よりも先にマネージャーに昇進する同期が現れて、勝手に勘違いしていたことに気付かされました(笑)。
冷静に考えれば、プレイヤーではなくマネージャーに求める姿を理解しておらず、当時は「よく売るプレイヤー」であって、事業をどう発展させるか、という経営的な発想は足りなかった。
でも、その事実が受け止められず「なんでや?」と正直思っていましたね。

これは転職した後に気付いたことですが、自分の強みや足りないところが客観的な視点で評価できていなかったのだと思います。
そうならないためにも、例えば紹介会社などに登録し、自分の市場価値を客観的に把握することをお勧めします。今はどれだけ給料がよくても、自分自身のスキルや経験が外の世界でどれくらい通用するのか冷静に判断できる材料は持っておくべきです。

【4】重要なのは打席にたくさん立つこと…いかに緊張する場面を創るか

大学での授業風景
大学で「営業学」の講師を務めることもある小山 聡章氏。真剣勝負なのですごく緊張するそう。

読者に向けてアドバイスいただけますか。

小山 聡章氏 いかにたくさんの失敗が積めるかどうかが大きい。私もそうでしたが、若いころは根拠のない自信やプライドを持っているものですが、そういうものは早めに失敗や挫折を味わいつぶすこと。その失敗経験から謙虚さと大胆さの両方が育つことになるはずです。
そのためにも、できるだけバッターボックスに数多く立つことが重要だと思っています。今は労働寿命が長くなっているため、40代でも決して遅くありません。

以前上司から言われて今でも大事にしているのが、「成長したかったらいかに緊張する場面を創るか」という言葉です。頭をフル回転させて、今できる200%でぶつかっていくことが大事だと教わりました。
そういう意味でも、とにかく打席に立つことを意識してもらえればと思います。
ただ、どうしても人は楽なほうに行ってしまいがちですので、私は仲間と一緒に寺子屋のようなものを運営し、そこで「何のために働くのか?」「人生のテーマは何なのか」を言語化し、シェアしています。
1人で進めるのはつらいかもしれませんが、仲間と一緒に共有しながら頑張っていくことは大事です。

ステップアップシートのイメージ
図は、楽な方へと流れないよう、自律するためのステップアップシート。1年間の目標を「パフォーマンス」と「クオリティ」を指標に、年初に自ら組み立て仲間とシェアする。
画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

若手以外の中堅、30代の方にアドバイスするとしたら?

小山 聡章氏 我々の業界には“自分はプロフェッショナルです”と自認する人が多くいますが、それはどちらかというとスペシャリストのニュアンスに近い。
お客さまから選ばれる真のプロフェッショナルとは、成果を出すことはもちろん、専門性を磨きながら、常にイノベーションし続けていることだと私は考えています。
30代であれば、何かの専門性に特化しているケースも少なくありませんが、得意分野を複数持つことも大切です。それらのかけ合わせが多くなっていくほど自分の価値が高まるはずです。まだまだチャレンジできる世代です。
仕事は人生を面白くするための装置です。仕事を通じて自分と世の中がどう関わっているのか、を考え続けることが大切だと思います。自分のキャリアは自分のもの。主体的にこれからの人生を切り拓いていっていただきたいですね。

小山 聡章 著書

「トップ営業のお客様から『教わる力』」(PHPビジネス新書)
売るのが難しい高額商品を取り扱う生保業界にあって、世界トップクラスの実績を出し続ける営業のプロが語る、失敗や挫折から獲得した珠玉の仕事術。顧客に喜ばれる“プロの営業”としてのあるべき姿に触れ、人間力に裏付けされた営業の魅力や奥深さに気付かされる。数多くの顧客と向かい合って獲得した営業力の源泉とは?

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文:酒井 洋和  写真:編集部

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