リーダーは自分と他者との違いを知り、フラットに本質を捉えることが大事

リーダーとしてチームをまとめる立場となって、目標に向かって行動しようとした時、チームメンバーや状況などを正しく捉えることが第一ステップとなります。その時に重要なカギを握るのが、リーダー自身のメンタル。「仕事の時に感情など入るはずがない」という人ほど注意が必要です。というのも、人の判断を狂わせる思い込みや誤解などには、実は感情面、つまりメンタルが大きく影響しているからです。フラットに物事を見るためにも自分の感情を可視化するメンタルトレーニングが有効なのです。

田中ウルヴェ 京氏

【1】チームをまとめるリーダーに、求められるメンタルとは

チーム全体の目標のもと、1人ひとりが力を発揮するために

ビジネスとチームスポーツには、いくつかの共通点があるといわれています。「2人以上の集団で同じ目標のもと、それぞれが役割を遂行し協力し合う」ことは1つの基本的な共通点です。その際に各自がスキルを高め、努力をしながらも、それぞれがバラバラに頑張っていては、なかなか成果は出にくいものです。一方、個人技で劣っていたとしても、チームとしての信頼のもと連携し合うことで相乗効果が生まれることがあります。
そう考えると、1人で頑張れば一定評価された営業パーソンと、チームでの成果を問われるリーダーやマネージャーとしてのメンタルのあり方には、大きな差異があることが想像できるでしょう。
チームで目標に到達するためには、チームワークが必要なのは自明ですが、そのためにメンバーが行なうべき3つのことがあると言われています。

1)1人ひとりが自分のことをよく知ろうとすること
2)他人の中にある他人自身の違いを知ろうとすること
3)違いがあることを認め合い、それぞれのやり方を尊重すること

例えば山登りをする際に、ある人は南側から、またある人は北側から登ろうとするかもしれません。しかも目標そのものも南側から見れば黄色い旗で、北側からは青く見えるかもしれない。お互い見ている旗の色に違いがある上で、共通の目標に登っていきます。
この時、重要になるのが「信頼関係」です。南側から登る人は北側の様子が分かりません。そのため、さぼっていないか疑心暗鬼になったり、やり方に不満を感じたりしてしまうこともあります。こうした齟齬を調整し、チームをまとめていくのがリーダーの役目といえるでしょう。

フラットな状況判断や評価が求められるリーダーのメンタル

それぞれ異なる人間が集まるチームでは、様々な思い込みや誤解が生じやすいものです。その中で、1つの目標のもと、それぞれが個人力とチームワークを発揮するためには、評価軸であり要となるリーダーの存在は重要です。その時に必要なリーダーの仕事は、大きく3つあります。

1)メンバーごとの差異をリーダー自身が理解し、それぞれのやり方を尊重する

近年ではリーダーが全員を理解して尊重するよりも、リーダーを含めた全員が相互に理解し合えるチームとなることを重視する傾向にあります。しかし、その場合でも、リーダーが各自を理解しようというスタンスを見せて初めて実現できるものといえるでしょう。

2)チームとしての共通認識を育み、言葉として整理し提示する

チームとしての目標を、言葉を尽くしてすり合わせ、チームとしてのやる気や勝利のイメージ、到達点などを具体的にイメージさせることが大切です。

3)目標に向かうメンバーの状況をパトロールする

これは決してサボっていないかのチェックではありません。状況に変化はないか、問題は生じていないか、各メンバーの状況に目を配り、より成果が出るように調整する。問題があれば課題解決を考えるというわけです。

ただし、これがすべて公平にできるとしたら、“神様”の領域です。リーダー自身も他人とは異なる人間であり、どうしても自分と似た人を高く評価したり、理解しにくい異なる人を低く評価してしまう傾向にあります。当然ながら、目標の見え方にも、パトロールの際にもバイアスがかかる可能性は高い。そうした見方のクセを是正し、状況を正しく捉えるためには、やはり「自分を知ること」が大切なのです。

【2】先ずは自分のリーダーとしての癖を知ることから

自身の強み弱みを知り、チームに最適なリーダー像を目指す

もちろん、構成するメンバーによってリーダーのあり方も変わり、リーダーにとって、マネジメントしやすいチーム、しにくいチームがあることは確かです。少し前なら、営業部門は日本人・男性・プロパーという均一型で年功序列というチームが多く、リーダーとメンバーの見方や価値観が似ていたこともあり、マネジメントは比較的容易だったと言われています。そして、その姿は「日本のあるべきリーダー像」として考えられてきました。

しかし、現在では、男女や年齢、経験、国籍など多様なメンバーによって構成されるチームが増えています。変化の激しい、先の読めない時代にあって、多様性がチームの強みとなってきているわけです。しかし、そうなると従来の正解である「あるべきリーダー像」のやり方だけではチームをまとめることは難しい。裏を返せば、正解にとらわれることなく、自身の強みを発揮したそれぞれのリーダーのあり方を考えることが必要といえるでしょう。

そして、その鍵になるのが、自分が持つ「メンタル」の傾向です。自らの強みや弱みを知り、足りない部分はトレーニングで鍛えていきます。その指針として、まずは自分がどのようなリーダータイプなのか、診断してみましょう。

自分はどんなリーダー?
タイプ診断でリーダーとしての癖を知ろう

リーダーとしてどのようにふるまっているのか、実際の場面を想像しながら、直感的に当てはまるものを選んでみましょう。一番多いのがあなたのタイプということになり、マネジメントしやすい相性の合うメンバーのタイプも分かります。しかし、必ずしも4つのタイプにはっきりと分かれるわけではありません。4つのタイプがそれぞれ融合し、その配分があなたのリーダーとしての個性であり、強みと弱みということになります。

願わくば4つのタイプともすべて当てはまり、メンバー1人ひとりに対して合った対応を使い分けることができればよいのですが、それはあくまで理想の話。しかし、強い部分を発揮するだけでなく、弱い部分をトレーニングによって補完することで、リーダーとして成長できるはずです。

田中ウルヴェ 京 著書

『人生最強の自分に出会う 7日間ノート 超一流のメンタルをつくる感情整理プログラム』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ストレスの多いビジネスシーンにおいて、いざという時にも動じない最強のメンタルを手に入れるためには「自身の心を知ること」が第一歩。そうした心理学研究に基づくコーピング理論のもと、考え方のクセやストレスのタイプを知り、感情を整理するための方法を、7日間のレクチャー方式で紹介している。実際に書き込める記入シートが多数用意されており、手にとったその日から自分の手でメンタルトレーニングを実践することができる。

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この連載の著者

田中ウルヴェ京

ソウルオリンピック シンクロ・デュエット銅メダリスト。日・仏・米でシンクロ代表チームのコーチを歴任し、米国セントメリーズカレッジ大学院(修士修了)、その後アーゴジー心理専門大学院、サンディエゴ大学院で、認知行動療法や競技引退後の心理、パフォーマンスエンハンスメントを学ぶ。帰国後2001年より、プロスポーツ選手から一般までメンタルトレーニングの指導、および企業研修、講演等を行い、パラリンピック車いすバスケットボール男子日本代表チームやなでしこジャパン(サッカー日本女子代表チーム)のメンタルコーチ、また報道番組レギュラーコメンテーターも務める。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング上級指導士。2017年、IOCマーケティング委員に就任。夫はフランス人、一男一女の母。