周囲の期待とプレッシャーに押しつぶされないで、成果を出す方法は?

実際に悩みを抱えている方のご相談ごとに、京先生から具体的なアドバイスをいただくケーススタディ編。今回は、営業マネージャー1年目のTさんのお悩みを解決します。プレッシャーから解放されるために、「プレッシャーを上手に手放す」方法を一緒に学んで行きましょう。

田中ウルヴェ 京氏
相談

プレッシャーに押しつぶされそう。
人の目を気にしない強いメンタルがほしい。

  • 相談者:Tさん(3X歳 営業マネージャー1年目)
女性のマネージャーを増やしたいという経営層の意向もあり、今期から我が社で初の女性営業マネージャーになりました。他の女性メンバーのためにも頑張らなければと思う一方で、家庭と仕事の両立がうまくいかず、強いストレスを感じる日々です。特に注目されてプレッシャーがあるほど、普段ではありえないような失敗をすることがあり、なぜこんな大変なことをやっているのか、自分で分からなくなります。人の目を気にしない強いメンタルがほしいです。

【1】京先生よりアドバイス:
プレッシャーをかけているのは他人ではなく自分かも?

怒った顔で聞いてるんじゃありません。ニコニコ顔で質問しますね(笑)。
「あなたは、本当にそんなに期待されていますか?それは思い込みではありませんか?」

人はかなりいい加減なものです(笑)。「期待しているよ」「君に任せたいんだ」という言葉に、重みがない場合だってあるんです。もちろん良かれと思って励ましのつもりで言ってくれている人もいるのかもしれませんが、どちらにしろ、その真意は分からないわけです。でもここで明らかなのは、あなたが多少失敗したとしても組織の存続があやうくなるようなことはないはず、ということではないでしょうか。

Tさんが女性管理職として成果が出せなくても、そのせいで、今後、会社が女性管理職の登用を見送ることはまずないでしょう。それなのに、大きな重いプレッシャーを感じているあなたは、裏返せば、それだけ責任感の強い素晴らしい人なのだとも思います。だからこそ、これからますます成長していくことができるあなたが自分で自分にプレッシャーをかけてはもったいない。良い機会なので、今感じているプレッシャーについてちょっと考えてみましょう。

プレッシャーのきっかけは他人の声がけであったとしても、そのプレッシャーをどう捉えるかはあなた次第。例えば、他人の言葉によって「だから、私はできる人間であらねばならない」と自分を自分で縛ってしまったとしたら、それは確かに苦痛ですよね。更に、もしもあなたの心の中でも「私はいつも完璧でいたい」というような想いがあれば、その理想像と現実の自分との乖離が、常に自分にプレッシャーをもたらしているということにもなります。それだけ頑張りたいのだという意味では素晴らしいことなので、その向上心をうまく自己調整して、一歩一歩成長し根拠のある自信を作っていきたいものです。

【2】京先生よりアドバイス:
成果を出したければ、成果のための「行動」に意識を向けて

自分で理想像を作って「自分はできる人間である」「人に期待される自分でありたい」とプレッシャーをかけることは、決して悪いことではありません。むしろ平時においては、向上心を高く保ち、目標を定めて地道に努力する原動力になることが多いのです。おそらくTさんも普段から、期待に応えたいと頑張り、成果を上げてきたタイプなのではないでしょうか。

しかし、プレッシャーが強すぎると心身に影響を及ぼし、パフォーマンスやモチベーションが低下してしまいます。それが原因で、本来得られたはずの成果が得られないとしたら大問題ですね。これを改善するには、今あるプレッシャーというエネルギーを行動に変換する必要があります。つまり、「女性第一号管理職として」といった言葉を意識するのではなく、「今日のプレゼンテーションはどういう進め方をするとシンプルに伝わるだろうか?」といった今やるべき行動に意識を向けることです。

アスリートもプレッシャーを感じた場合は、まず「期待されていること」に意識がいっている自分を自覚し、その上で、「期待に応えて頑張らなきゃ」といった曖昧な状態を、「具体的にどういう行動をすることが大事なのか」に変換しているわけです。例えば、試合前に試合中の自分をしっかり想定した上で、事前準備として音楽を聞いたり、ストレッチをしたり、瞑想をするといった心身の準備を入念におこなうことも多いです。

プレッシャーを感じてはいけない、ではなく、プレッシャーを感じる自分を認め、行動に変換する。それが基本ですが、もし、自分1人ではなかなか心の整理が難しそうであれば、信頼できる他人に「ごめん、ただ聞いてくれるだけでいいから15分時間くれる?」と言って、ただただ自分の気持ちを話すことも効果的です。自分の心の状態を話すことは「心の可視化」に繋がり、それこそ、自分の今の状況を客観視できるのです。話しているうちに、あれ、よく考えたら、プレッシャーとかいって自分の考え過ぎだったか?と、あっけらかんとなれたりするものです。

田中ウルヴェ 京 著書

『人生最強の自分に出会う 7日間ノート 超一流のメンタルをつくる感情整理プログラム』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ストレスの多いビジネスシーンにおいて、いざという時にも動じない最強のメンタルを手に入れるためには「自身の心を知ること」が第一歩。そうした心理学研究に基づくコーピング理論のもと、考え方のクセやストレスのタイプを知り、感情を整理するための方法を、7日間のレクチャー方式で紹介している。実際に書き込める記入シートが多数用意されており、手にとったその日から自分の手でメンタルトレーニングを実践することができる。

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この連載の著者

田中ウルヴェ京

ソウルオリンピック シンクロ・デュエット銅メダリスト。日・仏・米でシンクロ代表チームのコーチを歴任し、米国セントメリーズカレッジ大学院(修士修了)、その後アーゴジー心理専門大学院、サンディエゴ大学院で、認知行動療法や競技引退後の心理、パフォーマンスエンハンスメントを学ぶ。帰国後2001年より、プロスポーツ選手から一般までメンタルトレーニングの指導、および企業研修、講演等を行い、パラリンピック車いすバスケットボール男子日本代表チームやなでしこジャパン(サッカー日本女子代表チーム)のメンタルコーチ、また報道番組レギュラーコメンテーターも務める。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング上級指導士。2017年、IOCマーケティング委員に就任。夫はフランス人、一男一女の母。