ウマが合わないと感じるメンバーとの上手な付き合い方とは?

チームで仕事をすれば、ウマが合うメンバー、合わないメンバーができることもあるでしょう。仕事だからと、公平であろうとすればするほど、苦手な人を意識してしまい、自然に振る舞うつもりがギクシャクしがち。ともすると「相手も自分のことを嫌っているのではないか」と思い込んでしまうこともあります。なぜ、ウマが合わないと感じるのか、そう感じた時にはどのように対処していけばいいのか。メンバーが一丸となって“仕事を進めていくため”に必要な「心のスキル」について伺いました。

田中ウルヴェ 京氏

【1】「ウマが合わない」と感じる状況と理由を正しく捉えよう

「ウマが合わない人がいる」という時、まずは好き嫌いという簡単な判断をする前に、それが自分にとってどんな状態なのかを考えてみましょう。すると「意見が対立する」「話が伝わりにくい」など様々な状況が浮かんでくるはずです。おそらくリズムやテンポ、目の付け所などが違っていて「ツーカーでやれない」ということが、そもそものきっかけであることも多いのではないでしょうか。

「通じにくい人」という印象を持つと、苦手意識が生まれ、それを気取られないよう、ますますコミュニケーションが減るという人もいるでしょう。しかし、その態度はいつしか相手にも伝わり、「嫌われているのかな?」「避けられている?」など、お互いに感情的な問題へと発展し、チーム内に不穏な空気が流れたりします。この不穏な空気こそ、問題をますますややこしくさせるものです。そうなる前に、今、自分が問題と向き合い、解決を図りたいものですね。

まず考えたいのが、「ウマが合わない」と感じる理由です。シンプルにむっとした時の状況を覚えておき、それがなぜなのかを分析してみましょう。 例えば「会議で自分の意見に反論する」「やる気を見せてくれない」など、様々な場面が思い浮かんだ時、なぜ相手がそうするのかを想像してみるのです。

この時、人は「あの人は平成生まれだから」「中途入社だから」などというように、属性に理由を求めてしまうことがあります。でもそれは事実ではないことは、もうお分かりですよね。平成生まれの全員にあなたは会って判断しているのではないからです(笑)。相手を枠組にはめて決めつけることは、同時にあなた自身をも枠組に当てはめることとなり、それはお互いの「お互いならでは」を相互理解することからかけ離れてしまいます。

【2】思いは同じでも、仕事の進め方や表現の仕方は人それぞれ

それでは、なぜ「ウマが合わない」と感じるのでしょうか。よくある理由の1つとして「やる気がある時の雰囲気の出し方=表出行動」の違い が挙げられます。

例えば、マネージャーが感情を言葉や態度に表すタイプで、キックオフミーティングでわーっと盛り上げたいのに、課題を見つけて不安を口にするタイプや、クールに計画を立てだすタイプなどに「やる気あるのか!?」と苛立つという話はよく聞きます。そして、それが続くと「嫌われているかも?」と孤立感を深め、同じように表出行動が派手なメンバーとばかり行動を共にするようになります。

「冷めている人って、やる気ないよね」「覇気がない人はメンタル弱いんでしょ」などと勝手に決めつける人がいますが、そもそもやる気の出し方は人それぞれです。一見クールな人でも、仕事の目的や目標などをしっかりと理解して、静かにやる気を燃え立たせているということだって当然あります。課題を見つけて伝えてきたり、冷静に作業を始めたりという行動は、実はその隠れたやる気の現れに過ぎません。逆に、相手からすれば、掛け声をかけたがる上司を「昭和のやり方なんだろうけど、声出すことが作業にはつながらないよね」と思っているかもしれないのです。

上司でも部下でも、お互いに、人の心の中は、理解することが難しいもの。自分にとってやる気が出ることだと思っても、逆に相手のやる気を削ぐ可能性もありますよね。だからこそ、自分のやり方だけが正しいと思ったり、押し付けるのではなく、「自分は自分の方法しか知らないのだ」と自覚することが大切です。 その上で相手のことを観察し、価値観や考え方などを想像しながら、モチベーションの種類やこちらの思いの伝え方などを工夫できたら、心のスキルが上がったと言えるのではないでしょうか。

時には自分のやり方について話すのもよいでしょう。先程の例のように「昭和のやり方」と思われているより、理論や実践知に基づくものであると知ってもらえた方がうれしいですよね。押し付けではなく、互いに伝え合う状況が作れると、逆に、部下から「自分のやり方に対する新しい見方」を教えてもらえることもあります。

【3】ウマが合わない人がいるチームこそ高い成果が期待できる

本来、仕事においては、思いや目標を共有できているのなら、熱くやる気を語って仲間で盛り上がるのも、黙々と取り組むのも、「成果が出るならどちらでもいい」はずです。

しかし、ウマが合う人と仕事をしたいという人もいます。話が合う、共通点が多い、価値観や考え方が似てる、ということが大事な人もいるでしょう。一緒にいたくなるのも分かりますが、冷静に考えてみると、仕事はそれぞれ個々に得意なことを持ち寄り、協力することで成果が上がる ものでもありませんか。お互いの凸凹をカバーし合うだけでなく、上手く活用することがカギです。特に長期的には、最初は価値観ややり方が違う「ウマが合わない人」もいる環境にいるからこそ、組織で仕事をする価値があるという経験を持っている方もいるはずです。

実際、本当の意味で仕事ができる人は、「自分と合わない人」というレッテル自体を作ることをしません。自分自身に「誰とでも仕事を遂行するにはどういう思考と行動であることが最善か」という軸があれば、合う合わないという評価をすることがなく、「その人、その状況に合った対応」を実践するからです。 例えば「親睦を深める」という目的なら、夜にお酒を飲みに行かなくても、ランチや朝食ミーティングでもいいでしょう。自分がざっくりと任される方が好きでも、細かく指示や計画をもらう方が仕事を進めやすい部下がいるなら、それに合わせるはずです。

手法や伝え方のバリエーションは豊富な方がリーダーとしても厚みが増します。何より、「経験を積めば積むほど、分からないことが増えるものだ」ということを意識して、新しい出会いから学ぶ姿勢があれば、おのずと、自分のことを話すばかりでなく、相手のことを聞きたい姿勢になると思いませんか。

田中ウルヴェ 京 著書

『人生最強の自分に出会う 7日間ノート 超一流のメンタルをつくる感情整理プログラム』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ストレスの多いビジネスシーンにおいて、いざという時にも動じない最強のメンタルを手に入れるためには「自身の心を知ること」が第一歩。そうした心理学研究に基づくコーピング理論のもと、考え方のクセやストレスのタイプを知り、感情を整理するための方法を、7日間のレクチャー方式で紹介している。実際に書き込める記入シートが多数用意されており、手にとったその日から自分の手でメンタルトレーニングを実践することができる。

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この連載の著者

田中ウルヴェ京

ソウルオリンピック シンクロ・デュエット銅メダリスト。日・仏・米でシンクロ代表チームのコーチを歴任し、米国セントメリーズカレッジ大学院(修士修了)、その後アーゴジー心理専門大学院、サンディエゴ大学院で、認知行動療法や競技引退後の心理、パフォーマンスエンハンスメントを学ぶ。帰国後2001年より、プロスポーツ選手から一般までメンタルトレーニングの指導、および企業研修、講演等を行い、パラリンピック車いすバスケットボール男子日本代表チームやなでしこジャパン(サッカー日本女子代表チーム)のメンタルコーチ、また報道番組レギュラーコメンテーターも務める。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング上級指導士。2017年、IOCマーケティング委員に就任。夫はフランス人、一男一女の母。