ロープレ(ロールプレイング)は営業職や接客業の育成手段として多く活用されています。新人のみならず中堅のメンバー教育にも効果的な訓練ですが、ポイントを抑えた正しいやり方で実践しなければその効果は得られません。本記事では「ロープレとは何か」というそもそものところから、メリットや進め方、成功に導くポイントなどを解説します。
ロールプレイングとは「役割演技」のことで、営業職においては実際の商談場面を想定してメンバーが顧客役と営業役を演じ、実践に通じる疑似体験を積む研修手法です。
新人メンバーの場合は、挨拶の仕方や名刺交換、顧客とのコミュニケーションの取り方、自社製品・サービスの分かりやすい説明の仕方など、基本的な営業スキルを身につけるために行います。中堅メンバーを対象に行う場合は、各メンバーの課題や弱点の克服が主な目的となるでしょう。
ロープレは、本番に近い設定であればあるほど、高い効果が期待できます。
それでは、ロープレを行う4つのメリットについてご紹介しましょう。
メリットの1つ目は、ロープレを通じて成功体験を積めることです。
特に、新人メンバーは、最初から実際の商談の場で成約までのプロセスを経験することは難しいでしょう。一方、たとえロープレであっても、商談中のやり取りを疑似体験して成約までの流れを進めることは、メンバーにとって価値ある経験になります。
さらに効果を高めるには、上司や先輩がロープレ中の言動などをきちんと評価することが大切。実践の場で生かせるよう、その場で振り返るようにしましょう。
ロープレによる疑似体験で商談の場に慣れることができる、これが2つ目のメリットです。営業未経験のメンバーにとっては、商談の場はかなりの緊張を強いられます。先輩営業への同行であっても、いきなり商談の場に出れば、まともなビジネストークはおろか、何が起こっているのか記憶もないままに終わってしまいます。
ロープレでは、商談の流れや商談中にどのような会話が交わされるのかなどを、落ち着いて経験することができ、独り立ちするときも余裕をもって現場に出ることができます。ロープレは、現場に出る前の営業活動のシミュレーションの場として最適なのです。
3つ目のメリットは、商談やトークのコツやノウハウを他のメンバーと共有できることです。
ロープレは、先輩や上司、同僚、後輩など複数のメンバーが参加して行われます。他のメンバーの営業活動、特に、成績のよいメンバーの営業活動は生きた教科書です。各メンバーが自分の営業活動を振り返るきっかけになり、新たな知見やコツ・ノウハウを吸収して実践の場で生かすことができます。
メンバーの営業活動における課題や問題点が明らかになる、これが4つ目のメリットです。経験を積めば積むほど、自分自身の営業活動を客観的に振り返ることは難しくなります。その結果、課題や問題点を置き去りにしてしまい、理由が分からないまま成績を下げてしまうかもしれません。
ロープレを行って複数のメンバーでチェックすれば、本人も気づいていなかった課題や問題点を見つけられるだけではなく、解決策や改善策もアドバイスできます。
ここでは営業商談のロープレを例にとって流れを説明します。いきあたりばったりではなく、しっかり事前準備をして実施することが大事です。
まず最初に役割を決めます。商談に登場する営業・顧客の役割を設けることは当然ですが、可能であれば客観的に外から商談を観察するオブザーバーの役割を設けることで、顧客役が顧客の役割に徹することができ、よりロープレの精度を高めることができます。
ロープレのフィードバックは、統一された基準で行い、的確・簡潔にメンバーに伝えることが大切です。そのためにも、評価する論点を事前にまとめて、チェックシートを作成しておくとよいでしょう。
チェックシートの項目例は、次のようなものが考えられます。
準備がそろったら、実際にロープレを実施していきましょう。ここで注意しておきたいのは、慣れ親しんだメンバーで実施すると、慣れてしまい緊張感を持って取り組むことができなくなることです。
また、同じメンバーでロープレを繰り返していると、だんだんと慣れてしまい、緊張感を持って取り組むことができなくなります。そうなると「演技ごっこ」のようになり、ロープレの効果は半減どころかなくなってしまうでしょう。
実際の商談をイメージし、できるだけ新鮮な相手と実施することが有効です。
“事前に作成しておいたチェックシートを使ってロープレの評価を行い、終了後は必ずメンバーにフィードバックします。 フィードバックを行うことが、商談の場面での課題の発見や問題点の発掘に繋がります。逆に言うと、フィードバックのないロープレには意味がありません。”
ここからは、ロープレの効果を高めるためのポイントについて確認していきましょう。
ロープレの目的が「スキルの向上」であることは言わずもがなですが、目的を大きく設定しすぎてしまうと、ロープレ中に意識するポイントがずれてしまいます。
「今回のロープレ」で意識すること、達成したい目標を設定し、意識的に取り組むようにしましょう。
ロープレの設定は、リアルであればあるほど効果的です。実際の取引先をモデルにして、業種や業界の中での位置付け、抱えている課題、予算などの会社情報を細かく設定します。くわえて、顧客役の人物像(性格や好み、経歴、担当職務範囲など)や状況(初訪問なのか最終段階なのか、他社と競合など)を細かく設定しておくことが重要です。また、営業役となるメンバーの苦手な顧客タイプを設定するなど、課題や弱点を克服するために最適な設定を考えるとよいでしょう。なお、これらの設定を営業役に伝える必要はありません。
いきなりロープレをやってみて、と言っても特に営業初心者では難しいものです。
最初は、リーダーやマネージャー同士でロープレを行い、模範的な演技を見せるのもよいでしょう。そうすれば、メンバーの「恥ずかしい」という気持ちもなくなり、ベテランのスキルを見て学ぶこともできます。
まずはリーダーやマネージャーのトークを完全にコピーするような気持ちで実施してみるのもスキルを取得する上では効率的です。
まずは「型」を知ることで、自信もつきますし、そこから自分に合わせてカスタマイズをしていくことができます。
ロープレの効果を確実なものにするために、ロープレ中の会話を録音することをおすすめします。ロープレ中、営業役のメンバーは次の質問の準備やメモ取りに気を取られていることが多く、何をどのように相手に話したかは断片的にしか覚えていません。
ロープレ終了後に録音を聞きなおし、内容はもちろん、声のトーンや話すスピード、聞き取りやすさなどもチェックしましょう。最初は恥ずかしいものですが、録音することで、自分のプレゼンテーションを客観的に振り返ることができ、メンバー自身も新たな発見を得ることができます。
ロープレの成果は、どれだけ本気で取り組めるかにかかっています。本番さながらの心構えと緊張感で臨まなければ、思うような効果は得られません。 ロープレを導入したての段階では、恥ずかしがってしまう人が必ず出てきますが、ロープレの目的を説明し、真剣に取り組むように指導する必要があります。
良かった点、課題や問題点、改善のポイントなどを、分かりやすい言葉で簡潔に伝えることが大切です。
また、課題や問題点ばかりを指摘するのは、メンバーの自信を失わせ、モチベーションを下げることになりかねません。できていない部分は長々とフィードバックするよりも、同じシチュエーションでロープレを繰り返すほうが改善につながります。
ロープレは、新人メンバーを商談の雰囲気に慣れさせたり、成功体験を積ませることでメンバーに自信をつけさせたり、中堅メンバーの課題・弱点を克服する手段としても有効です。そして、その効果を高めるにはいくつかのポイントがあり、的確なフィードバックが必要になります。
ぜひ日々の育成の中に取り入れていきましょう。
育成効果を高めるためのポイントや、フィードバックのポイントについて、実際にロープレ動画を見て、講師のフィードバックを踏まえて解説いたします。
ロープレをやっているがなかなか成果を実感できないとお思いの方、ロープレ文化を社内で定着させていきたいとお考えの方、ぜひご視聴ください。
開催日時:2024年10月16日(水)17:00〜18:00
・参加費無料
・Zoomでの配信を予定しております