営業組織を強化するセールスイネーブルメントとは?効果や進め方を解説

日本においても昨今注目度が上がっている「セールスイネーブルメント」。営業活動・営業組織の強化と改善が目的となるセールスイネーブルメントは、現在の営業状況を打破したいと考えている人にとってとても興味深い取り組みであるといえるでしょう。
セールスイネーブルメントを導入することで、営業の売り上げを効果的に向上させることができます。ぜひご一読して、今後のご自身の営業活動やマネジメント活動などでお役立てください。

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営業組織を強化するセールスイネーブルメントとは? 事例を交えて効果や進め方を解説

セールスイネーブルメントとは?

話題になっているキーワードではありながら、メディアによっても様々な定義がされており、いまいちセールスイネーブルメントの実態がつかめていない方は多いのではないでしょうか。
まずはその定義からご説明していきます。

セールスイネーブルメントの定義

「セールスイネーブルメント(Sales Enablement)」は、営業活動についての具体的改善案について広い視野で設計し、中・長期的に営業組織の強化・改善をするための取り組みのことをいいます。一言で表すと「営業組織を強くするための一連の改造サイクル」と言えるでしょう。

セールスイネーブルメントのポイント

もう少し具体に落としていくと、セールスイネーブルメントには以下の3つのポイントがあります。

成果につながる

その取り組みがきちんと売上に寄与しているということ、その前提で取り組み行うことがセールスイネーブルメントにおいて重要となります。

また、現場で活かせる、実態に即しているということも非常に重要です。
例えば、営業パーソンの育成を例にご説明します。

可視化する

1つ目の「成果につながる」とも関わりますが、成果につながっているかを見るためには、成果が見える形になっていなくてはなりません。そのため、この成果を数値で可視化するということはセールスイネーブルメントの大きなポイントです。

さらには、営業プロセスやノウハウを可視化することも重要です。これは「明文化」「平準化」と言い換えてもよいかもしれません。営業パーソンスキル格差をなくし、組織全体を強化するためには平準化が重要になります。

継続させる

まずはセールスイネーブルメントは継続的に目標を達成できる組織を作るための取り組みであることです。

また、一度やれば終わりではなくて、PDCAを回しながら継続的に実施していく取り組みであるというのもセールスイネーブルメントの特徴です。
何か施策を単発でやってはい終わりではなく、その成果を評価して、次の施策や次の改善に繋げていくということが重要になってきます。

従来の施策とセールスイネーブルメントの違いのイメージ

セールスイネーブルメントが注目される背景

セールスイネーブルメントが注目を集めてきている理由としては以下のような点が上げられます。

顧客の購買行動・需要の複雑化

インターネットが普及した結果、顧客の購買行動は大きく変化し、購買行動の前に譲歩収集を行うことが当たり前の時代になっています。また、購買者の価値観自体が多様化してきたことで、従来のある種場当たり的なやり方や根性論的なやり方が通用しなくなってきています。

新しい商品の増加で商品理解が困難になっている

競合との差別化を図るため、どんどん新しい商材や機能がどんどん増えていったりすることで、営業パーソンがキャッチアップをし、それに対応した営業行動をとることが難しくなってきています。

営業格差の2極化

プロダクト営業からソリューション営業への変化営業手法の変化に伴って、それに適用できる営業パーソンほど営業成績がどんどん高まり、一方でそうでない営業パーソンとなかなか営業成績が伸びなくなってしまうという、営業成績の格差が開いて二極化してしまっているといった状況があります。

働き方改革での労働時間減少

以上のように、営業パーソンに求められることはどんどん増価し、かつ高度になってきてしまっているにもかかわらず、労働可能な時間は短くなっており、効率的に、高い営業成果を上げることが求められています。

セールスイネーブルメントで見込める効果・メリット

セールスイネーブルメントに取り組むことで、営業活動や人材育成を仕組み化し、再現性を高める効果が期待できます。つまり、営業活動を最適化することができ、効率的に売上を上げられるようになるということです。
具体的な効果について、それぞれ解説していきます。

効果的な売上アップ

セールスイネーブルメントによって、営業活動などの成果が数値化され、多くの情報が可視化されることで営業分析がしやすくなります。
どのような行動が効果的なのか、最善の動き方について解析ができるということは、これまでよりも効果的な施策について考えることができるようになったといえるでしょう。
営業活動の最適化は、効果的な売上アップに繋がります。

営業の属人化の解消

これまでの営業スタイルは営業マンのスキルに依存した属人的ものが一般的でした。しかしセールスイネーブルメントにより数値化し、成功している営業活動を見える化を進め、仕組み化に取り組むことで、営業部門の営業力アップにつなげます。
再現性を得たよりよい営業活動はその後の営業の基本的な基準となるでしょう。この点でも、営業部門のスキルの底上げができたといえます。
また、よりよい営業活動の仕組み化が成功し、営業ノウハウが確立すれば、営業の属人化は解消されます。

セールスイネーブルメントの具体的な取り組み

ここからはセールイネーブルメントを構成する要素・実際の取組み内容について、もう少し詳細に見ていきます。
セールスイネーブルメントは人材育成のみに焦点を当てられがちですが、その範囲は実に広範です。

顧客理解

顧客理解という言葉自体は耳馴染みのある言葉ですし、営業活動には欠かせませんが、ここで重要なのは、顧客のペルソナを定義し、その顧客目線での「営業プロセス」を定義することです。

一般的な営業プロセスといいますと、このような感じは、テレアポ→初回面談→提案プレゼン→クロージング…受注 と言った流れが多いですが、主語が「営業パーソン」になっています。
極端な例にはなりますが、「今A社さんにはプレゼンをして見積もり提示が済んだのでクロージングも近いです!」と言ったときに、必ずしもA社の中で検討段階が進んでいるとは限りません。
この各プロセスを顧客が主語になるように再定義していきましょう。

この顧客理解・営業プロセスは、指標を計測する上でも重要になってきますので、セールスイネーブルメントの根幹と言ってもよいかもしれません。

コンテンツ

営業パーソンが日々使う「コンテンツ」を追加したり、ブラッシュアップしていくこともセールスイネーブルメントの重要な活動です。コンテンツには大きく2つあります。

顧客との関係強化コンテンツ

顧客の関心を引いたり、効果的に購買行動を進められるようにするためのコンテンツです。
例えば、ここに書かせていただいたような会社紹介商品紹介、また競合比較や価格表コストシミュレーションなどがそれにあたります。

顧客向けの営業資料はすでにある企業も多いと思いますが、例えば、同じ商品紹介の資料でも、広く情報収集をしている場面と、商材を絞って最終検討段階に入っている場面では必要な情報が異なってきます。
ですので、アルステージにいる顧客を次のステージに進めるための資料になっているかという点に注意して見直すことが必要です。

営業サポートコンテンツ

ノウハウの共有仕様であったり、勉強をするための資料やマニュアルといった形で、セールスイネーブルメントの活動を通し、計画した通りに営業パーソンが動けるようにサポートをするための社内向けコンテンツです。

よくありがちなのが商品知識に関するマニュアルはあるけれども、営業のスキルやノウハウについてはまとまっていないという状況です。

自社が営業活動を効率的に進めるうえで十分なコンテンツがあるかというところは、ぜひ見直していただければと思います。

スキルトレーニング

営業パーソンのスキルを高めるためのトレーニングです。スキルをきちんと体系化して、それをそれぞれの営業の方にしっかり身に着けていきます。

まずは、営業プロセスの各段階で営業の方がどのように 営業活動をするのかという具体的なアクションやそのための方法を定義・体系化し、それを研修などの形でトレーニングしていきます。

この時重要なのがコーチングです。残念ながら、営業スキルというのはテキストや動画を読んだり見たりするだけでは身につきません。
習得したスキルを実際に仕事で十分に使えるようにするには、マネージャーや上位の営業の方がフォローをしながら、実際の顧客に対してスキルを使えるよう指導していく必要があります。

マネージメントトレーニング

営業組織を強くするには、マネージャーも成長しなければなりません。
営業マネージャーの役割や求められるスキルというのは実に多岐にわたります。 一般的なマネージャーに求められる
◯目標設定
◯コーチング・モチベーション管理
◯評価とフィードバック
◯メンバーの育成
のほか、営業マネージャーとしてはさらに
◯戦略・戦術立案とプロセスマネジメント
◯顧客価値の向上
といった役割も求められています。こういった多岐に渡る能力を育てていく必要があります。

ツールと分析

前述の振り返りになりますが、セールスイネーブルメントにおいて「成果を可視化する」ことは大きなポイントです。
そして、成果を可視化して分析するためにはなにか「指標」がなくてはなりません。
例えばスキルトレーニングの部分ではトレーニグの進捗具合、テストの合否や点数、コンテンツの利用頻度や、そのコンテンツを使った場合のプロセスの進捗度合いなどです。

どのような指標を設定するかは組織ごとであったり目指す状態ごとに異なりますが、重要なのは「結果がでた際にどう活用するか」を決めるということです。
目的を先に置いて、それに対してどういう指標が必要なのか、計測するかを決めることがポイントです。

各所との連携強化

セールスイネーブルメントを進めるうえでは様々な関係者と連携をしていく必要があります。コンテンツ周りではマーケとの連携、育成の一部はもしかしたら人事に相談、といった具合です。
そして、セールスイネーブルメントは「これだけ投資してこれだけの成果を出します」というのを経営層にも理解して貰う必要があります。

また、営業組織内でのコミュニケーションというのも重要です。上意下達式になってしまうと、組織を強化していこうという理解・共感をえられなかったり、現場の動きから乖離してしまいます。

様々な組織を巻き込みながら、営業組織のみならず会社として組織を強くすると考えていきましょう。

セールスイネーブルメントの進め方

セールスイネーブルメントのポイントでも触れた通り、セールスイネーブルメントは「継続的」な取り組みで、1回やって終わりの施策ではありません。以下のようなサイクルを回していくことが重要です。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

理想と現実のギャップを確認

まずはじめにするべきは理想と現状とのギャップ確認です。
Asis-tobeと言ったりもしますが、
・現状がどのような状態であるかや、何もしなかったらどのような影響があるか
・望ましい将来像に対してどれぐらいの差があるのか
を検討していきます。

この際に、前述の各要素ごとに目指す状態・望ましい状態を考え、現状とのギャップであったり会社の方針とてらしあわせて評価をしていくとスムーズです。

実施計画を立てる

目指す状態とそれに対する現状を確認できたら、次に考えるのはそのギャップを埋めるために何をするか・誰がするか・いつまでにするか、です。

何をするか

確認してきた理想と現実のギャップのうち、まずはどこを埋めるところから始めるのか、またそのために必要なアクションを定義していきます。
理想としては、売上に及ぼす影響の大きさを加味しながら決定していきましょう。

誰がするか

次に、対象者を決めます。目的に対して適切なメンバーをアサインして取り組んでいきましょう。
また、「このチームでうまくいけば他に展開できそうだ!」というチームやメンバーをピックアップしていくこともセールスイネーブルメントの波を組織内で広げていくうえではポイントになります。

いつまでにするか

最後は「いつまでにするか」、期限を決めていきます。セールスイネーブルメントは、成果=売上につなげるための活動ではありながら、それ自体が売上を生むわけではない、いわば「投資」です。そのため、無期限に闇雲にやるという事は避けるべきです。

ずるずると引き伸ばしながら取り組むのではなく、期限を区切り、成果を確認して次の改善ステップに進むということを意識しましょう。

指標の計測

そしてやることを決めたら実践し、指標を計測していきます。繰り返しになりますが、成果につながる・可視化することがポイントですので、指標をきちんと計測していくことが重要です。

そして、その指標を元に再度理想と現状とのギャップを確認していきます。
・やったことがどれぐらい効果があったのか。
・効果があったのであれば次は別の課題に取り組むのか
・効果がなかった場合は継続するのか、別の施策に取り組むのか
を判断して再度サイクルをまわしていきます。

このサイクルは1施策をずっと回していくこともできますし、ある程度施策が回りきったら次の施策に取り組むこともできます。
もしくは、1部のメンバーで効果があれば次のメンバーに、といった形でサイクルさせることも可能です。

すべての要素を一気にイネーブルしていけるのであればそれに越したことはありませんが、スモールスタートで成果を実感しながら進めていくことで、より継続的に効果の高まる取り組みになっていくでしょう。

営業サプリでできるセールスイネーブルメント

ここまで、セールスイネーブルメントの様々な取り組みをご紹介してきました。営業サプリではご紹介した取り組みの中で「営業ノウハウの共有」「営業研修・営業パーソンの教育」といった点でご支援が可能です。

売れる営業の型作りサービスは、貴社の営業ノウハウを見える化し、チーム全員が使いこなせるよう浸透させるところまでを伴走し、チームの営業力を高めるプログラムです。
チーム内の「売れる営業ノウハウ」を集結し、誰でも実践できる営業の型を構築。営業スキルの個人差を解消します。

営業の型の「教育」で営業スキルの属人化を解消

オンライン型営業教育プログラム「営業サプリ」は、単に学ぶだけにとどまらず、ロープレを含む演習を弊社で用意するサプリコーチと、職場でご用意いただく職場コーチが監修し、フィードバックします。
貴社独自の型を搭載し、型の浸透を促すことも可能ですし、弊社でご用意している各コースの型をご活用いただくことも可能です。

セールスイネーブルメントとして様々なアプローチをご紹介してきましたが、チームを構成する営業パーソンのスキルというのは、営業活動の基礎となるものです。まず最初の地盤固めとして取り組んでみてはいかがでしょうか。詳しくは資料もぜひご覧ください。

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