リスキリングとは?導入のメリットや実施プロセスを解説

現在、世界中の企業で生き残り競争が激化しています。この苛烈な時代を勝ち抜く手段として注目されるのが、従業員の「リスキリング」です。本記事では、リスキリングについて、定義やメリット、実施する流れ、注意点、そして企業におけるリスキリング事例を解説します。リスキリングの実施を検討される担当者様は、ぜひご参考ください。

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リスキリングとは?導入の流れや注意点、企業事例を解説

リスキリングとは?

リスキリング(Reskilling)とは、技術の発展や働き方の多様化に対応するため、企業において従業員の職業能力の再開発や再教育を行うことを指します。要するに、企業が先導する従業員の「学び直し」です。業務と学習を同時進行させるのが、大きな特徴です。

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を語る文脈において、よく使われるビジネス用語の一つ。DX戦略とは、最新のIT技術を導入してビジネスモデルを変革することを指します。

  • ITスキル(プログラミングなど)
  • マーケティングスキル
  • データ分析

たとえば、以上のような分野でリスキリングの重要性が増していますが、デジタル技術への対応のみにとどまらず、企業戦略全般においても重要性が増しています。

リカレント教育やアンラーニングとの違い

リスキリングとよく似た概念に、「リカレント教育」や「アンラーニング」が挙げられるでしょう。これらはリスキリングと通底する部分が多い概念(用語)ですが、微妙な差異も存在します。

リスキリングとの違いも交えながら、これらの概念について解説しましょう。

リカレント教育とは?

リカレント(Recurrent)教育とは、学校を卒業し就職した後も、必要に応じて教育を受けることです。Recurrentは「循環する」といった意味の英単語なので、「生涯学習」のようなニュアンスを含みます。

一度仕事を離れて、大学などの教育機関で学び直すことを意味する点で、リスキリングとは異なる概念です。

アンラーニングとは?

アンラーニング(Unlearning)とは、有効性の薄れた知識やスキルを捨て、代わりに新しい知識やスキルを取り込むことです。「学習棄却」とも呼ばれます。取捨選別を重視する点が大きな特徴です。

リスキリングには知識やスキルの学習に延長性がある点において、アンラーニングとは異なります。

リスキリングが注目されている理由

リスキリングが脚光を浴びるきっかけとなったのは、2020年のダボス会議です。同会議において、「リスキリング革命」が主要な議題に上りました。日本においても2020年11月、経団連が「新成長戦略」の中で、リスキリングの必要性を説いています。

リスキリングが注目される背景として、新型コロナウィルスの影響は大きいでしょう。テレワークの導入より、これまでの働き方では対応しきれない場面が増えてきました。リスキリングを積極的に推進しなければ、環境の変化に対応するのが難しい時代なのです。

企業がリスキリングに取り組むメリットとは?

企業がリスキリングに取り組むと、以下のようなメリットが見込まれます。

  • 業務の効率化
  • 自律型(主体的)人材の育成
  • エンゲージメントの向上
  • 社内業務への応用が容易

業務の効率化

企業がリスキリングに取り組むことで従業員の能力が向上すれば、業務の効率化が期待できます。人手不足解消にも役立つはずです。新しいアイディアが、社内風土を発展的に改善する可能性もあるでしょう。

業務が効率化されれば、時間に余裕が生まれます。企業の側だけでなく、従業員の側にもライフワークバランスの充実が期待できます。リスキリングを従業員に提示する際の、有力な説得材料の一つになるでしょう。

自律型(主体的)人材の育成

従業員にリスキリングを課すのは、初期段階においては企業の側です。しかし、従業員にそもそも学び直しの意欲がなければ、リスキリングは成立しません。従業員の自律性や主体性が不可欠です。

換言すれば、リスキリングを達成する過程においては、従業員の自律性や主体性が育まれることも意味します。

エンゲージメントの向上

英単語としてのエンゲージメント(Engagement)には、「誓約」「約束」「契約」といった意味合いがありますが、共通するのは「深いつながりをもった関係性」です。マネジメント用語でエンゲージメントとは、「愛社精神」を指します。

リスキリングにより従業員が新たな学びのチャンスを得られれば、スキルアップがキャリアアップにつながり、最終的には給与アップにつながるはずです。給与アップが従業員のさらなるモチベーションアップにつながるでしょう。

リスキリングによるこうした一連のステップアップが、従業員の会社へのエンゲージメントを高めます。従業員のエンゲージメント向上は、各自の学習意欲をさらに高めるはずです。企業活動において、この上ない好循環が生まれるでしょう。

社内文化へのミックスが容易

新しい業務を開拓するにあたり、新しい人材を雇用するのも一案でしょう。しかし、新しい人材が既存業務を理解し会社の風土に馴染むには、それなりに時間がかかるはずです。どんな企業にも、それぞれ独特の社内文化が存在します。

社内文化に精通した既存の従業員自身がスキルアップすれば、スキルを社内文化にミックスさせた上で、新しい事業へと昇華させることが可能です。これは、業務の効率化やエンゲージメントの観点からも、望ましい状態と言えるでしょう。

リスキリングを実施するステップ

現代のビジネス環境では、急速な技術革新や市場の変化に対応するために「リスキリング(Reskilling)」が重要視されています。リスキリングを成功させるためには、計画的かつ効果的なステップを踏むことが求められます。本記事では、リスキリングを進める流れを4つのステップに分けて解説します。

ステップ1:現状のスキルと課題を分析する

まず、組織や個人の現在のスキルセットを明確にし、必要なスキルとのギャップを把握します。この段階では、以下のようなアクションが重要になります。

  • 業務分析:現在の職務内容や今後の業務ニーズを整理する
  • スキルマッピング:現状のスキルを一覧化し、今後求められるスキルと比較する
  • 課題の特定:業務遂行において不足しているスキルを洗い出す

データ分析や従業員のアンケート、ヒアリングを活用することで、より精度の高い分析が可能になります。

ステップ2:学習計画を策定する

スキルギャップを明確にした後は、どのように学習を進めるかを計画します。効果的な学習計画を立てるには、以下のポイントを意識しましょう。

  • 学習目標の設定:具体的なスキル獲得のゴールを明確にする
  • 学習手法の選定:オンライン研修、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)、eラーニング、ワークショップなど、適した学習方法を選ぶ
  • 学習期間の設定:短期・中期・長期のスケジュールを立て、進捗を管理する

また、学習の効果を高めるために、実践的な課題やプロジェクトベースの学習を組み込むことも重要です。

ステップ3:学習を実施し、定着を促す

学習計画に基づき、実際に学習を進めます。しかし、学んだ内容を実際の業務で活用しなければ、リスキリングの効果は限定的になってしまいます。学習の定着を図るためには、以下のような取り組みが有効です。

  • 実践機会の提供:新たなスキルを活用できるプロジェクトや業務に積極的に関与させる
  • メンタリング・フィードバック:上司や経験者からのアドバイスを受けながら成長を促す
  • 学習成果の可視化:習得したスキルの成果を定量・定性的に評価する

学んだ知識を実務で活用することで、スキルの定着率を高めることができます。

ステップ4:継続的な学習とアップデートを行う

リスキリングは一度きりの取り組みではなく、継続的にスキルをアップデートすることが重要です。そのために、以下のような習慣を組み込むことが有効です。

  • 最新情報のキャッチアップ:業界トレンドや技術の進化を常にチェックする
  • スキルアップデートの仕組み化:定期的な研修や勉強会を実施する
  • キャリアパスの見直し:スキル向上とキャリア成長を結びつけ、モチベーションを維持する

学習を継続的に行うことで、時代の変化に対応し続けることが可能になります。

リスキリングを実施・実践する上での注意点

リスキリングを実施する際には、以下の3点に留意する必要があります。

  • 経営陣の理解促進
  • モチベーションの喚起
  • コンテンツマッチングの重視

経営陣の理解促進

リスキリングはいわば、「学習時間」です。短期的には会社の生産性を低下させる可能性があります。一時的にとはいえ、就業時間内に従業員が生産活動を止めることには、反感を持つ経営者も多いでしょう。

  • リスキリングが中長期的な有用性をデータなどで示す
  • 業務に支障を来さないための「学習時間確保戦略」を用意する

以上が、経営陣を説得するためには必要です。

モチベーションの喚起

どうすれば、従業員が自発的にリスキリングに取り組んでくれるのか。これは、リスキリングにおける大きな課題です。

実施時にはリスキリングを行うことで、個人のこれからのスキルアップやキャリアアップにどのように良い影響があるのかを明示して動機づけをしてあげることが必要です。もしくは、「リスキリング推進グループ」を作って組織としてリスキリングを進めて行くことを明確に提示することも一手です。
また、「給与アップの提示」もモチベーションにつながりやすいでしょう。スキルの習得により収入が上がる可能性があることを示せば、従業員にとってこの上ないモチベーションアップの材料になるはずです。

従業員が自発的に学習したくなるような、「希望」を提示してあげましょう。

コンテンツマッチングの重視

社内の課題にマッチしたスキルを習得しなければ、リスキリングの効果が出にくいため、従業員のモチベーションも下がります。会社にとって何が一番足りないのかを見極める、「現状分析」が求められるのです。

適切な現状分析が、課題と学習のコンテンツマッチングを導くでしょう。

企業におけるリスキリングの実施事例

企業におけるリスキリングの事例として、3社のケースを紹介します。

日本マイクロソフト

2021年7月、日本マイクロソフトはパーソルホールディングス株式会社と共同で、デジタルリスキリングに取り組むことが発表されました。スキルセットとマインドセットの併走型支援により、積極的な人材育成を目指すようです。

「Microsoft Power Platform(マイクロソフト独自のトレーニングプログラム)」を活用するのが大きな特徴。同プログラムの活用方法に長けたコンサルタントが、研修プログラムの企画開発とコーチングを担当しています。

導入から日が浅いので、現時点で成果についての調査報告などはありませんが、近い将来何らかのデータや指針を提示してくれるでしょう。

日立製作所

2022年7月、日立製作所は人工知能(AI)を活用して、社員のリスキリングを促すシステムをグループ全体で導入することが発表されました。AIが全社員のスキルを把握し、近い将来必要になるデジタル知識や外国語の習得を促すシステムです。

AIを活用したリスキリング事業として、大きな注目を集めます。

AT&T

アメリカの通信業界最大手の一角「AT&T」は、10億ドルもの巨額を投じたビッグプロジェクトとして、2013年からリスキリングに取り組んでいます。

  • リスキリングに参加していない従業員に比べて、参加した従業員の昇進率が上がった
  • 退職率を抑えることに成功した

たとえば、以上のような報告があります。世界中でよく知られる、リスキリングの成功事例です。

リスキリングを推進するなら……

リスキリングの事例が示すように、世界的には10年以上前からリスキリングを実施する会社が存在します。しかし、日本国内においてはいまだ、十分な広がりを持った取り組みとは言えないかもしれません。

リスキリングを実施するための、専門的な知識を有するエキスパートが国内には少ないのが、その一因でしょう。

社内でリスキリングを推進する場合、一から体制を整えるのも一つの方法です。しかし、時間効率を考慮すれば、思い切って外部研修を取り入れるのも一案でしょう。

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営業パーソンのリスキリングの推進に際してお困りの企業担当者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の情報は公開時点のものです。

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