OJTは人材育成に欠かせない手法ですが、適切に行われなければ育成に支障が出ることもあります。実際に、OJTを取り入れているものの、成果が出ずに悩むリーダーやマネージャーは少なくありません。成果が出ないまま続けていると、いずれ業績にまで影響が出て、リーダーやマネージャーの責任問題に発展することもあるでしょう。
そこで、今回はその基礎知識やメリット・デメリット、効果的な実施方法などを取り上げます。ぜひご一読いただき、理解を深めてください。
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On-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略称です。現場で働きながら学べるため、実践的な能力が身につきます。まずは、その成り立ちやOFF-JTとの違いについて説明しましょう。
OJTという制度が生まれたのは第一次世界大戦時のアメリカです。戦時中、アメリカの造船所では、当初想定していた10倍以上もの人員が必要となりました。そこで、効率よく人材を育てるために誕生したのが、やってみせる・説明する・やらせてみる・補修指導をするという「4段階職業指導法」です。これが、現在のOJTの原型となっています。
OFF-JT(Off-the-Job Training)とは、新人を育てる場所やトレーニングの仕方、目的などが異なります。OJTは、実践で通用する能力を効率よく身につけさせることを目的としてトレーニングをするのが特徴です。一方、OFF-JTは、仕事に関する知識について理論を踏まえた内容を学ぶことを目的とし、実践に直結しない事柄についても学ぶ点が大きな違いといえます。
OJTとOFF-JTは、比較されることの多いトレーニング法ですが、それぞれのメリットやデメリットを正しく理解することで、用途に応じて適切に使い分けることができます。
実務を体験することで学べるため、受けた研修の内容がそのまま現場の作業につながり、実際に仕事をする際の感覚のズレが小さくなります。さらに、現場であらためて新人に教える必要がなく、効率の良いトレーニング方法といえるでしょう。
また、トレーニングを通して、新入社員と教育担当者との人間関係を構築することができます。研修の段階で先輩と顔を合わせるため、新人が現場に出たときにスムーズに職場に溶け込むことができます。
OJTはマンツーマンによって行われるため、それぞれの新人の理解度に応じてトレーニングのペースを変えることができる点もメリットです。
実施するには、新人の数だけ教育担当者を用意しなければいけません。教育担当者は新人につきっきりで教えることになるため、教える側の負担が大きくなります。また、教える人間の能力がトレーニングの質に大きく影響するため、育成結果にバラツキが生じます。それを防止するには、実施前に綿密な計画を立てる必要がありますが、立案するだけでも大変な手間と時間がかかるでしょう。
そのほか、業務のなかでトレーニングを行うために内容が途切れ途切れになってしまい、仕事を体系的に捉えづらいというデメリットもあります。
日常業務のなかでは習得しづらい、体系化された知識や手法、考え方などを新人に学ばせるのに適しています。それらは、実際の業務とは直接関係がなくても、ビジネスパーソンとして将来的に必要になるものです。
そのほか、集団での研修となるため結果のバラツキが生じにくいことや、外部の研修サービスを活用しやすいことなどが挙げられます。外部の研修サービスを利用すれば、研修にかかわる負担を減らすことが可能です。
体系化された知識や手法、考え方などを学ぶのに適している反面、これらを学んでもすぐに実務で活かすことは難しいでしょう。OJTと比べて実践性や即効性に欠けるという点がデメリットです。
また、OJTの場合は、業務をしながら研修を行うことができますが、OFF-JTは通常の業務とは別に研修の時間を確保しなければいけません。
さらに、自社で研修を行う場合には、研修内容の作成や見直し、資料の準備、講師の選定などの作業負担が発生します。外部研修を利用すると手間や時間は削減できますが、その分費用が高くなるため検討が必要です。
OJTの4つの手順について、詳しく解説します。
1つ目は「Show」です。先輩が新人の前で実際に仕事を行い、その様子を観察させます。現場でどのような業務が行われているのかを実際に見ることで、新人は仕事の全体像を把握します。
2つ目は「Tell」です。新人に仕事のやり方について詳細な説明をします。新人の前でやってみせた仕事について、その作業をする意味や背景なども含めて説明することで、仕事に対する理解を深めることが目的です。また、新人の抱いている疑問や不安について質問する機会を与え、分かりやすく回答します。
3つ目は「Do」です。ここまでの手順を経て、新人は仕事のやり方とその意味を把握しています。しかし、頭で分かっていることが、すぐ実践できるとは限りません。そこで、実際に新人に作業をやらせてみるのです。実際に自分でやってみることで、新人は自分の理解が不十分であったことを自覚します。
4つ目は「Check」です。実務をやらせたあとは、その内容を評価して改善につなげなければいけません。新人の行った作業について適切に評価し、できていなかった部分などを指摘します。改善されるまで根気よく、新人にしっかりと指導・注意することが大切です。このあとは、再び最初の手順に戻り、同じ手順を繰り返していくことで新人の力を伸ばします。
「OJTを実践しているが、うまくいかない」そんな悩みを抱えているリーダーやマネージャーは多くいます。なぜ成功させるのが難しいのか、その理由について解説しましょう。
教育担当者は、自分の仕事と並行して新人教育に携わる必要がありますが、新人教育の時間を捻出できずに苦労しているケースが多いです。その結果、スケジュール通りに教育が進まない、新人ごとに研修の進み具合が違うといった事態が発生します。
マンツーマンによる新人教育は予想よりはるかに難しく、誰にでもできることではありません。人材育成に関するノウハウが必要ですが、新人教育のマニュアルなどを用意しておらず、現場に丸投げしている会社が多いのが実情。人材育成におけるノウハウや技術を持たない教育担当者が漠然と教えても、OJTの効果は得られません。
陥りやすいパターンの一つです。教育担当者が、トレーニングの目的や進捗状況などを正しく理解していないまま場当たり的な指示を繰り返すことで、新人が小間使いのようになってしまいます。これでは、トレーニングの効果が半減するどころかなくなってしまい、新人はいつまでたっても成長できません。
OJTの難しさは分かりましたが、それを踏まえたうえで効果的に実施する方法はあるのでしょうか。ここでは、OJTの効果を最大限に引き出す方法を3つご紹介します。
前述したように、教育担当者は指導能力を有していなければいけません。そこで、人事部門と現場が協力をして、新人の受け入れプログラムを作成するのです。新人教育の目的や指導方法、業務内容、評価基準、計画表といったものをまとめてマニュアル化しておけば、教育担当者による質のバラツキを防ぐことができます。
教育担当者がその目的を正しく理解していなければ、トレーニングは適切に行われません。新人教育におけるトレーニングの目的は「実務能力」と「思考法」を習得させることだと、教育担当者に周知しましょう。徹底できなければ、教育担当者が新人を単なる小間使いとして扱ってしまう可能性があります。
どうしても自社で効果的なOJTが難しい場合は、外部の研修サービスを活用することも考えてみましょう。
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営業サプリを活用することで、受講者だけではなく教育担当者も効果的な実践方法を学ぶことができるでしょう。
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今回は、OJTについて、その成り立ちから成功させるためのコツまで解説しました。
OJTの成果が出ないという悩みは、多くのリーダーやマネージャーが抱えています。うまくいかない場合は、その理由を分析したうえで内容や指導方法を見直してみましょう。また、教育担当者への意識改革も必要です。本記事を参考に効果的なOJTを実施し、より強い営業チームを作ってください。