クロージング 概論

成約率の差はここから生まれる!営業に必須のクロージング方法

営業におけるクロージングの意味とは?

「クロージング」とは英語の「closing」、つまり「締めくくり」「終結」に由来する。
プロ野球では勝ちゲームの最終回を投げるピッチャーのことを「クローザー」というが、営業用語としての「クロージング」は、営業プロセスの最終場面である「契約の締結」「成約」の意味として用いられる。
ニュアンス的には「顧客に対し提案内容、価格に納得いただき契約を締結する動き」、更に言えばその頭に「競合との受注競争に勝ち抜き」という一文を加えて、私たちは営業現場で「クロージング」という文言を使用している。

さて、言葉の意味はいいとして、「ヒアリングや提案がどんなに素晴らしいものであっても、クロージングが弱いと最後の最後になって競合に負けてしまう」という意味で、惜しい営業を生み出す最大の要因ともなっている。
共感力が高く、相手を慮ることができる人というのは、ヒアリング力に長けていることが多い。細かいニーズや真意を把握することができるため、当然のように企画提案の内容も競合他社より魅力的なものに仕上がっている。
にもかかわらず、クロージングの段になってしまうと、そこまで武器だったはずの相手を慮る人としてのやさしさが仇(あだ)となって、相手に結論を迫ることができないことが少なくない。
“天は二物を与えず”とはよく言ったものだ。

こうした「ヒアリング上手のクロージング下手」という人達は、紳士、淑女的に「では、よい結果をお待ちしています」などというスマートな言葉と笑顔を残して帰ってしまう。
すると、その後に競合がやってきて「では、うちはその仕様で金額的には5%落としますので、今、結論を出して下さい」と泥臭く結論を迫って、あっさりと成約してしまったりするのだ。
まさに“鳶(とんび)に油揚げをさらわれる”残念な結末に違いない。

熾烈な受注競争の中、商談の準備、ヒアリング、提案、見積、プレゼンまではトップを走りながら、最後の最後にクロージングで一押しできなくて失注してしまうのは、最も効率の悪い営業となってしまう。
そこに至るまでに営業パーソンがその案件に欠けた時間、技術や制作部門の人員にかかった工数が、クロージングのみ他社に負けただけですべて水の泡になってしまうのだ。
残念ながら営業には受注と失注しかなく、常に「百ゼロ」の世界なので、こんなもったいない話はない。

売れる営業パーソンのクロージング、コツとその流れ

では、そんな惜しい営業パーソンにならないためには、どのようにすれはいいのか。
ただでさえ、相手に結論を迫ることができなかったり、それを「相手に失礼なのでは…」と思ってしまう人達が、こうした状況を引き起こしているので、ここではそうした人でも売れる営業パーソンになれるクロージングのコツとその流れを紹介したい。

1)「今日、発注書を下さい」と言える“理由づくり”

クロージングの本質は「今日、発注書を下さい」と結論を迫ることにあるが、そのためには理由がいる。
それが「さもありなん」という合理的な理由であるなら、顧客は唐突感も、「引っつかれ感」も持たない。
例えば、IT業界であれば、PM(プロジェクトマネージャー)、PL(プロジェクトリーダー)、要員の確保や納期がその理由の定番だし、採用系の広告であれば締切、人材系であれば取りやすいタイミングといったことである。

2)いったん結論を打診する

「今日、発注書を下さい」と言える“理由づくり”で考えた「さもありなん」という合理的な理由をメインに、以下のように結論を打診してみる。
「中西部長、非常に手前勝手な事情で申し訳ないのですが、ご存じのように現在、開発プロジェクトが目白押しでして、要員の確保が非常に難しくなっております。
実は、今回の類似案件のPM(プロジェクトマネージャー)がちょうど先週、プロジェクトを終えまして、もし、今日、内示という形で部長の意思表示をいただけましたら、私、すぐにこの場でそのPMと主要メンバーのアサインができるのですが…。もちろん、正式な発注書は稟議を終えた後にいただくとして…」
といった感じだ。

3)結論を出せない理由を明確にする

重要なのはここからで、2)の「今日、発注書を下さい」というのは、今日、発注書が欲しいから言っているのではなく、結論がいただけない理由が聞きたいのだ。きっと上記のように結論を迫れば、相手は次のように結論を出せない理由に言及するだろう。
「そこまでおっしゃられたので、私も率直に申し上げますが、御社の金額5300万円ですが、他社から同等の仕様でもっと魅力的な金額をいただいておりまして、実際、社内の意見も分かれている状態で…」
引き出したかったのは、まさにこの情報だ。金額5300万円のままでは受注できないので、提案や金額の微修正をして再クロージングの動きに展開したい。
1回のクロージングと2回のクロージング、後者にほうが受注率が高いのはもうお分かりだろう。

4)再クロージングの日時を決める

上記のように競合情報が入った時点で、安易に値下げするのではなく、「うちとしてもギリギリの金額を出してますので…。しかし、この仕様をこう変更していただけたら、もしかしたら、減額が可能になるかもしれないので、持ちかえりまして、部長の決裁を取って参りますので、明後日の午後にお時間をいただきたいのですが…」というように必ず、再クロージングの日時をその場で決めたい。
なぜなら、その場で決めておかないと、顧客の熱が冷めてしまって「今回は別な会社に発注することになりました」といった事態に陥ってしまう危険性があるので、必ずそこで時間決めをすること。

5)受注できない理由の解消に動く

顧客から引き出した競合情報などを勘案し、取りに行くのか行かないのか、取りに行くならどのような条件で、という風に上司や関係部門と意見調整しながら、受注できない理由の解消に動くのが、再クロージングまでの活動になる。

クロージング力を高めるためには?

クロージングというのは、確かに相手に結論を迫る度胸や熱意、気持ちの部分もあるが、「気持ちの持ち方」云々ではスキルにはならない。
実は、迫る気迫や前のめりな自分を演じるモチベーションなどなくても、クロージングスキルは高められる。
要は先に紹介した「今日、発注書を下さい」と言える合理的な理由を徹底的に考え抜くことである。
そのトークを口に出して、申し訳なさそうな口調、トーン、表情になるように何度も練習すれば、精神論でなんとかしようとするより、手っ取り早くクロージングが上達するので、是非とも試してみて欲しい。
1回か2回、なんとかうまくやれれば、要領がつかめるようになる。

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この連載の著者

エマメイ先生(大塚 寿)

1986年、株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。サンダーバード国際経営大学院でMBA取得後、営業研修を展開するエマメイコーポレーションを創業、現在に至る。著書に『リクルート流』(PHP研究所)、「オーラの営業」(Nanaブックス)、累計28万部のベストセラー『40代を後悔しない50のリスト』シリーズ(ダイヤモンド社)など。

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