コミュニケーション 概論

売れる営業トークはどこが違う?つかみと流れを解説!

営業で最も重要なスキルは「トークスキル・コミュニケーションスキル」であると考えている人は圧倒的に多いでしょう。
商談中、営業パーソンと顧客との間にはコミュニケーションしかないので、最重要とするのも当然のことです。
しかし、最重要とされながらも、どういうトーク・コミュニケーションが業績を上げるのかという具体的方法はほとんど知られていません。本記事では営業に必要なコミュニケーションの流れやコツ、つかみ、具体的なトークやコミュニケーションスキルの高め方を解説します。

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売れる営業パーソンの営業トークは何が違う?

売れる営業パーソンと売れない営業パーソンの営業トークはいったい何が違うのでしょうか。実は、その差はほんのわずかしかありません。
ほんのちょっとの差なのに、100対0 つまりは受注と失注という正反対の結果となってしまうのです。

売れる営業トーク、売れない営業トーク

まずは、そのわずかな差の一部を紹介すると、このようになります。

売れる営業トーク、売れない営業トークの違いの比較表

売れる営業トーク

  • 主語が「御社」「〇〇部長の課題としては〜」など相手側
  • 相手が知りたいことを把握してから話す
  • 事例を用いて相手にイメージさせる
  • ポイントを絞って話す(この特徴は3つあります)
  • 客観評価で話す
  • 氷上、表現が豊か

売れない営業トーク

  • 主語が「弊社」「当商品は〜」など自分側
  • 営業ツールやカタログの順に話す
  • 定型の営業トークで伝えようとする
  • パンフレットやカタログに沿って話す
  • 自画自賛(説得力がない/胡散臭い)
  • 表情も表現も単調

某営業アウトソーシング会社では、インサイドセールスで「主語の組み換え」をしただけで、ゲイトキーパー突破率やアポイント獲得率は5倍以上高まったという実例もあります。1つ1つは小さいことでも、業績に与える影響は侮れない事がわかります。

売れる営業トークの流れとは?

「売れる」営業トークの組み立て方にはコツがあり、基本的なトークの構成は以下の通りとなります。

基本的なトークの構成-つかみから次回アポの設定の流れ

細かく見えますが、大きく分けると以下の3ステップとなります。

  • つかみ:信頼感を得る
  • 話題を広げる:同調し、情報を提供する
  • 顧客満足を高める:また会いたいと思わせる

それぞれのコツを紹介していきましょう。

STEP1.つかみ:信頼感を得る

売れる営業トークのストーリーというのは基本的に「お笑い」と全く同じで、「つかみ」が非常に重要になります。

挨拶の後の営業の入り方としては雑談が一般的ですが、雑談にもセオリーがあるのをご存じでしょうか。それは、「相手が喜ぶ話題を振る」「素朴な疑問を投げかける」「共通する話題を振る」の3つです。

このセオリーを知らないと大体天気天候の話になってしまいがちですが、商談のメインになる事柄と天気の話が全く関係ないとしたら、営業の組み立てとしては取ってつけたようなぎこちない流れになってしまいます。
相手が喜ぶ話題、素朴な疑問といったトークは、「自分が相手に興味・関心を持っている」ことを感じさせ、お互いの距離を近づける効果を生み出すので、是非とも上記の3つを意識してみてください。

STEP2.話題を広げる:同調し、情報を提供する

相手との話を広げるためには、相手の話に同調するという姿勢からスタートします。その上で、聞き役を演じ、必要に応じて深掘りの質問をしたり、あえて話に食いついて、強めに相槌を打ったりという演出が相手を話しやすくさせるポイントです。
そこに次の8つのネタのいずれかを使うと話題が広がり、商談が前に進み始めます。

  • 1)今抱える課題をどうすれば解決できるのか
  • 2)他社はこうした課題にどう対処しているのか
  • 3)最大公約数的な課題
  • 4)具体個別の解決策、ソリューション
  • 5)先進事例
  • 6)同業界、同業種の情報
  • 7)ヒントになりそう異業種の事例
  • 8)ホットなテーマ

STEP3.顧客満足を高める:また会いたいと思わせる

「つかみはOK」、それなりに話題も広がったにもかかわらず、次回までの宿題も出されず、次回の訪問の約束もいただけないということは少なくありません。その原因の第1位は、その面談での顧客満足度が合格点に到達していないことによります。

顧客満足度は「知りたい情報を提供できたか」、「相手が課題を感じていることに対し何らかのヒントを明示することができたか」、といったことで判断されます。これらは事前準備次第で解消することができる部分なので、疎かにしないようにしましょう。

営業に必須なトークスキル・コミュニケーションスキルとは?

よく「トークスキル・コミュニケーションスキルが高い、低い」という言い方をしますが、そもそも営業に必須なトークスキル・コミュニケーションスキルとはどのような概念なのでしょうか?

実は日本語は、話している言葉や単語だけで意思疎通をする言語ではありません。例えば「結構です」という言葉1つとっても様々に解釈可能なことがわかるでしょう。
そのため、こと日本の営業に必要なコミュニケーションには、考えや情報の受信(聞く)、発信(話す)に加え、円滑な意思疎通の土台となる「場を作る」スキルが非常に重要です。

営業に必須なコミュニケーションスキル

場を作る力

「誰と」「何を」「何のために」話すかによって、「場の空気」は変わってくるものです、実はトークやコミュニケーションの技術によって「場の空気」は自分の都合のいいようにコントロールできます。
相手に共感する、笑顔で話す、第1声に注意するといった方法もありますが、売れる営業パーソンたちが円滑なコミュニケーションの「場作り」として用いているコツのベスト5は以下のようになります。

  • 1)間口の広い一般的な話から仕掛ける
  • 2)他社事例を介在させる
  • 3)ホットなキーワードを投げる
  • 4)同業界、同業種の話題を振る
  • 5)自社の実績を明示す

これらのコツを実践することで、「会話が弾みやすい雰囲気」を醸成することが可能です。

聞く力

「聞く」には「聞く」「聴く」「訊く」の3種類があります。「聞く」は耳に入ってくる音を感じるということ、「聴く」は、耳を傾けて聞くという傾聴のスキル、つまりは「注意深く聞く」ということになります。そして、3つめの「訊く」というのは『尋ねる』ことで『質問のスキル』と表現したほう分かりやすいでしょう。
つまり、営業シーンの「聞く」場面というのは、ほぼほぼ「聴く」と「訊く」で成り立っていると言えます。

売れる営業パーソンと売れない営業パーソンの差は、この『訊くスキル』=『質問のスキル』に表れます。この質問の仕方にも、売れる営業パーソンが使う頻度の高い質問法があるので、解説をしていきましょう。

1)確認法

「1点確認させていただきたいのですが、現在の運用コストに課題感といったものはお持ちでしょうか?」

2)鎌かけ法

「運用コストに100億円以上かけている大手さんでも、一部パッケージを導入する企業さんも出てきましたが、御社でも、そのあたりの方向性については…」

3)択一法

「御社は全国拠点の購買を集中させてコスト低減を追求するスタンスなのでしょうか。それとも集中購買ではなく、それぞれの商圏に合った品揃えを追求するため、個店やエリアごとに、購買機能を持たせるスタンスなのでしょうか?」

4)深掘り法

「10年以上続けられた評価制度を変更されるということですが、その背景にはどのようなことが…」

5)小さな同意獲得法

何かの紹介や説明の後に「この辺り、ご同業他社の事例がございますが、次回、お持ちしましょうか?」といった相手からの「はい、お願いします」という同意を得る質問

伝える力

営業トークスキル・コミュニケーションスキルと聞くと、どうしても私達は「話術」を連想してしまいますが、営業における営業トークスキル・コミュニケーションスキルは「話術」というより「伝える力」の方に近いと言えます。
なぜなら「話術」には「分かりやすく説明すれば相手は理解してくれる」という大前提がありますが、こと法人営業においては「説明」や「言葉」だけでは伝えられないことが山ほどあるためです。

「説明」より、実際のサンプルやデモ画面、ビジュアルやイラスト、施工例、導入事例の方が、よっぽど相手に伝わるということは押さえておきましょう。
その上で、自社商品やサービスをより魅力的に伝える方法は3つあります。商談ではこの3つのセオリーを駆使してみてください。

  • 1)自社製品の説明より先に、それによってもたらされるベネフィット(恩恵)について語る
  • 2)営業ツールに記載された順番ではなく、相手が知りたい順に話す
  • 3)実際の導入事例、ユーザーのコメントを交えて話す

コミュニケーションの場は商談の場だけではない

現場では盛り上がったのに、課長や部長に上げてもらう段階で、立ち消えになってしまったり、どこかで止まってしまうといった場面は、営業活動をする上で誰もが直面するでしょうk。
その原因は、現場では課題と感じていたことが、管理職や経営陣からしてみると「単なる現場のワガママ」だったり「大所高所から見ると優先順位の低いこと」にすぎなかったりするケースですが、これが意外に多いのです。
逆にトップ同士、役員同士では盛り上がったのに、現場での検討を指示したものの、現場での優先順位がそれほどでもなくて、商談が萎んでしまうケースも少なくありません。
こうした状況を回避するためには、相手の「言っていること」が

  • 事実なのか
  • 個人的意見なのか
  • 推測なのか

という「裏付け」を取っておきましょう。実は“売れる営業パーソン”が行っている情報収集や顧客の課題の抽出とは、ヒアリングというよりこの「裏を取る」行為に近いのです。

直接的な方法としては、先に紹介した確認法で、「1点、確認なのですが、今、課長がおっしゃったクラウド化のお話はすでに中期経営計画(中計)的な計画に織り込み済みなのでしょうか?」といったような言い方になります。
次に間接法としては、相手の別の部署の人やステークホルダーに尋ねる中で事の真偽を明らかにしていく方法があります。

トークスキル・コミュニケーションスキルを高めるためには?

ここまで、様々なポイントについて触れてきましたが、トークスキル、コミュニケーションスキルは、このような作法、方法、コツさえ知っていれば誰でも簡単に習得することができます。
このような作法・方法・コツを身につけるにはどうすればいいのか、最後に解説していきます。

先輩・上司のマネをする

まずは身近な先輩・上司の所作をマネすることが成長への近道です。どのような場面でどのようなトークをするのか、コミュニケーションを取ることで、どのような顧客の変化を引き起こしているのかを注意深く観察し、良いと感じる部分を盗んでいきましょう。

トークスクリプトを用意する

頭の中で描いた流れだけで実際の現場でトークをしても、うまくいかないケースのほうが多いでしょう。まずはトークスクリプトを作り、場面やトーク内容を可視化することも重要です。

繰り返し練習する

トークスクリプトとして洗い出したフレーズ、トークの流れをパソコンでも、スマホでも、手書きでもいいので、実際に書き出して、次に何度も何度も実際に口に出して、そのフレーズが馴染むまで繰り返し練習していきます。このトレーニング法は“シャドウロープレ”と呼ばれる最も実践的な方法です。

ある程度口に馴染んできたら、今度は対人ロープレで練習をしていきましょう。ビデオやスマホで録画し、自己レビューさせたり、研修講師や実績のある人からのレビューを繰り返すと効果が高めることができます。

伴走型オンライン営業研修「営業サプリ」では、演習としてロープレを実施し、一流コーチ陣からフィードバックを受けることで短期間で営業トークスキル・コミュニケーションスキルを向上させることが可能です。社内でそのような研修を行うことが難しい、外部のプロからのアドバイスを受けたいという方は、ぜひご検討ください。

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この連載の著者

エマメイ先生(大塚 寿)

大塚寿 顔写真

1986年、株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。サンダーバード国際経営大学院でMBA取得後、営業研修を展開するエマメイコーポレーションを創業、現在に至る。著書に 『〈営業サプリ式〉大塚寿の「売れる営業力」養成講座(日本実業出版社)』『自分で考えて動く部下が育つすごい質問30(青春出版社)』、『50歳からは、「これ」しかやらない(青春出版社)』など。

大塚寿

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