アプローチ 概論

既存顧客・見込顧客・潜在顧客、それぞれの適切なアプローチ法とは?

新規顧客開拓を効率よく進めるために、まずやるべきこと

既存顧客へのルートセールと比較して、新規顧客を開拓する営業の難易度は「5倍高い」とは昔から続く営業の格言だ。
更に業務改善による省力化と働き方改革が相まって、顧客自身が時間に追われるようになり、そのあおりで商談に当てる時間も縮小傾向になっているため、ますます新規開拓営業の難易度は高くなっている。

しかし、既存顧客からの売上、利益というものは年々逓減していくものなので、それ以上の新規顧客や新規案件でカバーしていかないと右肩上がりの成長が望めなくなってしまう。
つまり安定した成長には新規顧客の開拓が欠かせないのだ。

そんなことから営業パーソンには毎年、新規顧客開拓の目標や予算が課せられるわけだが、「きつい!」「無理!」「できない!」とブルーな気持ちにさせる元凶になることも少なくない。
ところが、新規開拓営業というのは正しい「やり方」と「切り口」を工夫するだけで、とたんに成果が出るようになるので、ここではその適切なアプローチ手法を共有していきたい。

まず最初にやるべきことは、ターゲット顧客の分類からだ。
最もシンプルに新規開拓を考えると「どこに、どのようにアプローチするか」ということになる。「どこに」はターゲティングのことだが、受注確率の高いターゲットから優先的にアプローチするのはもちろん、ターゲットごとにアプローチ方法を変えるのがコツだ。

大雑把にターゲットを分けると「既存顧客」、「見込顧客」、「潜在顧客」になる。

「既存顧客」というのは既に取引があるため人間関係もあり、比較的情報も取りやすいことから、案件化率、受注率が最も高くなるため、他部門へ紹介営業を仕掛けたり、クロスセルやアップセルの機会をうかがいたい。

「見込顧客」は、自社の商品やサービスに対しある程度、興味・関心を持っているであろうと想定できる顧客のこと。こちらも相応の案件化率、受注率になるので、優先的に営業したい。

「潜在顧客」というのは、まだ自社商材を認知していないので、案件化するかどうかも不明な顧客であるため、まずは接点を持つところから始めたい。

見込顧客へのアプローチ成功率を高めるアポイントのコツ

見込顧客へのアプローチ成功率というのは、使用するターゲットリストとアプローチトークで9割以上が決まってしまう。
つまり、いいリストを用いてもアプローチトークが陳腐化していればアポイントを取ることができないし、どこにでもあるような汎用的なリストを用いても案件化するような見込顧客にはたどりつかない。

まずはリストについて。基本的にはリストには数が勝負の絨毯爆撃用リストと、見込顧客を絞り込むためのピンポイント射撃用リストがある。

前者は;

1)帝国データバンク会社年鑑等信用調査会社の年鑑、データベース

2)iタウンページ

3)求人サイト(リクナビ、マイナビ、エン・ジャパンなど)

などが代表的になる。

一方後者は;

1)各種業界団体会員名簿、年鑑

2)HP(ホームページ)への問合せリスト、展示会、セミナー参加企業リスト

3)過去の名刺

4)専門誌(紙)記事(バックナンバー)

5)AIを利用した「法人見込み顧客サーチエンジン」

などだ。

かつてはゴールデンリストを言われる受注率の高いターゲットリストを作ること自体がノウハウだったが、昨今ではインターネットやサーチエンジンのおかげで誰でも簡単にターゲットリストが作成できるようになった。

次にリストに掲載された企業へのアプローチになるが、最も重要なことはキーパーソンに最初にアプローチすることだ。中小企業の場合は社長もしくは役員をターゲットにすべきだし、大手であれば部長クラスにアプローチしたい。

キーパーソンの調べ方もインターネットがイノベーションを起こしてくれた結果、ターゲット企業のホームページから、営業窓口になるであろう部門名を入力した後「部長」と入力すれば、かなりの確率で部長名が判明するようになった。
中小であってもホームページには代表者名は必ずあるので、必ずテレアポ時には実名で呼び出したい。

成功率を高めるテレアポのコツ

インターネットやSNSがこれだけ社会に浸透したにもかかわらず、新規顧客開拓に成功している企業のアプローチ方法は今でも電話だ。
もちろん、物心ついた時からデジタル社会に育った若手社員にとっては「なんでインターネット社会にレガシーの電話なんか使うんだ」と思うかもしれないが、メールによる新規開拓の成果があまりに乏しいため、相対的に一番効果があがる電話によるテレアポがいまだ主流になっている。

とはいえ、売り込み電話に対するガードは年々固くなり、働き方改革の中で“海のものとも山のものとも分からない営業パーソンと会うほど暇ではない”という考え方も増えて、「まずは資料を送ってください」という返答が非常に多くなっている。
そんな状況でも、コンスタントにすんなり会いたいキーパーソンに対しテレアポで成功している人はいったいどんなやり方をしているのだろうか?

そのコツは以下の3つだ。

1)キーパーソンを名指し

「情報システム部の中西部長をお願いします」と新規でも、必ず苗字で相手を指名すること。

2)相手を主語(主題)にして話す

「もし、中西部長が運用コストに課題感をお持ちでしたら、お役に立てるかもしれません」というように相手側を主語にして話す。

3)「A or B」の疑問文で時間取りをする

「一度、事例集をお持ちしつつ情報交換ができればと思いますが、いかがでしょうか?」では相手に「No」という選択肢を与えてしまうので、「一度、事例集をお持ちしつつ情報交換ができればと思いますが、来週と再来週とではどちらがお手隙でしょうか」の二者択一の疑問文の方が、歩留まりがはるかに上がる。

飛び込み営業

飛び込み営業とは文字通りノンアポでお客様を訪問する営業手法だが、さすがにオフィスのセキュリティが厳しくなったこともあり新規顧客に対しては、かなり少なくなってきた。
BtoCの業界でも同様に防犯カメラやセキュリティ強化、在宅主婦自体の数が減ったことから効率が悪いという理由で縮小している。

そんなことで、今なお生き残る現代版「効果的な飛び込み」としては、クロスセルを狙って、既存顧客の設計1課を訪問した後、そのまま飛び込みで「今、1課の野崎様とお会いしたところなのですが、一度2課の方にもご挨拶方々カタログをお渡しして帰りたいのですが…」とアプローチする方法などが主流となっている。

もちろん、そこで1課の野崎様からご紹介頂き、一声かけてもらう方がお会いできる確率が高くなる。
そうした方法で1社にアポと取って訪問したついでに“数珠つなぎ”に他部門を開拓する飛び込みは今なお効果はあるので、試して欲しい。

メール

休眠顧客やHPへの問い合わせに対する返信メールであればともかく、メールを用いて新規顧客開拓をするのはDMと同じくらいに歩留まりが低いので、よほど商品力がある場合を除きお薦めできない。
例外的に非常に尖がった技術があったり、ニッチで狭い業界で一目置かれている企業であれば、メールでもある程度の効果は出るかもしれないが、その際も相手が最初に目にする「件名」を相当魅力的なものにしないと、メールを開いてさえもらえない。

逆に、受注から次の受注まで数年といった間が空いてしまう特性の商品やサービスの場合や、地方や海外でなかなか密に訪問できない既存客の定期フォローにこそメールは活かしたい。

潜在顧客への接点の作り方

潜在顧客というのは、自社商材の存在を知らないので購入することができない顧客層でもある。その存在に気づきさえすれば、「なんだ、こんないい商品があったのか」とさっそく購入を検討する可能性もあるわけで、まずは顧客接点を作って、商品を認知してもらうことからスタートしなければならない。

マーケティング的には「不認識見込客」を「認識見込客」にステージアップさせることだが、具体的な方法としては展示会を活用した営業、セミナー営業、キャンペーンの活用、オンラインの活用、DM・ダイレクトメールの活用などがある。

展示会を活用した営業

国や自治体、業界団体主催の展示会というのは、興味、関心を持つ業界関係者が最新情報を求めて一堂に会するため、非常に効率的な見込顧客発掘の機会となる。
何といっても来場者が多く、顧客の方から足を運んでくれるため、潜在顧客への接点作りという意味では積極的に利用したい。

反面、露出効果を高めるためにはブースのコマ数を多くしたり、展示の演出のための出費も数百万円に及ぶことがあるため費用対効果を勘案しながら進めなくてはならない。

セミナー営業

「AIソリューションセミナー」「SEO対策セミナー」といった旬なテーマで集客し、密着度が高い関係性の中で潜在顧客を「認識見込客」にステージアップさせる効果的な方法だ。
競合各社ともセミナーが有効な販促活動だと知っているので、陳腐化したテーマにならないよう、顧客が聞いてみたいテーマ、講師、内容で勝負したい。

旬という意味では、テーマが時流にあっていれば、講師はその道の専門家なら著名人である必要はないが、逆に有名人の知名度を利用して集客する手もある。
セミナー営業の最大のメリットは興味、関心のある人しか足を運ばないので、参加者すべてが見込顧客としてターゲット化できる点だ。

キャンペーンの活用

キャンペーンというのはディスカウント価格、リベート、トライアル、インセンティブといった通常の取引とは異なる特典によって、期間限定で取引の敷居を下げたり、特典を与えて取引を促進させる販売促進策の1つである。
潜在顧客を一気に見込顧客に変えるカンフル剤にもなりやすいので、他業態のキャンペーン例なども参考にしつつ知恵を絞ってキャンペーン企画を作りたい。

反面、キャンペーンは確かに販促にはつながるが、利益率を下げてしまうリスクがあることを念頭に入れておきたい。
また、頻度が多いと顧客はキャンペーン慣れしてしまい、キャンペーン時しか付き合わなくなる傾向もある。

オンラインの活用

ネットを利用した潜在顧客との接点の作り方にはリスティング広告やコンテンツマーケティングがある。
リスティング広告とは、検索キーワードに応じて検索結果の画面に表示されるテキスト形式のクリック課金型の広告である。

コンテンツマーケティングは潜在顧客にネット上で「見つけてもらう」仕組みであり、読者にとって役立つ記事、データ、ワークシート、調査結果、動画などを配信して認知を促し、見込顧客、既存顧客、ファンに育てようとする一連のマーケティング活動になる。

DM・ダイレクトメール

昔ながらの手法になるが、未だ廃れないのは効果があるからだ。DMも年々進化して、開封しやすい封書、中に貼ってみたくなるシールといったギミック(おまけ)を入れてみたり、なんらかの特典を懸賞にしてみたりと趣向を凝らしている。
DMで重要なのは違和感や意外性なので、大きさでも色でも質感でもいいので外見に「おやっ?」と感じさせる工夫を加えたい。

既存顧客へのアプローチ方法

既存顧客に対しては、ただその取引を守るだけでなく、年間取引額を右肩上がりにするための波状的な仕掛けを継続しないと、売上の維持すらできない。
日常的にクロスセル、アップセルの布石を打つことはもちろん、競合につけ入る隙を与えないためにも顧客接点をキープしていきたい。

既存顧客に対して横展開として他の部門を紹介していただいたり、深堀として関連する案件を発掘したりと既存顧客から新たな案件を作り出す営業の方が、新規顧客から案件を作り出すより難易度が低いので、是非とも既存顧客の営業窓口は優先的に広げていきたい。

具体的な既存顧客へのアプローチ法は以下の5つが代表的なものになる。

1)定期訪問

既存顧客への定期訪問はルーティーンとしてあらかじめ計画しておかないと、間が空きすぎて行きづらくなってしまったり、「A社の営業は全く顔を出さない」という印象を与えてしまったりする。
取引額ごとに「毎週訪問する顧客」「毎月訪問する顧客」「四半期に1度は訪問する顧客」等に分類し、定期訪問を計画したい。

2)定期点検

半年に1度とか3ヵ月に1度とかで定期点検が必要な機器や設備においては、フィールドサービスと一緒に同行したり、顧客の状況をフィールドサービスにヒアリングさせて新なニーズや課題を拾い出す動きをする企業は業績が高く、不況にも強いという事実がある。
また、定期点検を利用したリプレース提案というのも常套手段なので、ここはアップセルにつなげていきたい。

3)情報提供

既存顧客へのアプローチ方法の王道がこの情報提供なので、顧客に“役立ちそうな”情報を小まめに持参したい。
情報提供というのは、あくまで口実であって既存顧客から新しい案件の情報を引き出したり、他の部門を紹介していただくきっかけづくりなので、情報も小出しにするなどして、できるだけ訪問回数を増やすようにしたい。

4)使い勝手の確認

「売り逃げ」という言葉があるように受注したら後工程の部門に引き継いだきり、トラブルでもない限りは客先に顔を出さなくなる営業パーソンも散見されるが、たとえそれが営業パーソンにとってはマイナス情報であっても、顧客の生の声を拾いに行く行動を心掛けたい。

5)紹介

顧客からの紹介というのは案件化率も受注率も非常に高いというのは、よく知られた事実だが、実際のところ「紹介営業」で実績をあげている営業パーソンとそうではない営業パーソンとの違いは紹介依頼をしているか、いないかだけの違いなのだ。
紹介依頼というのは顧客にせっつくようで、迷惑に違いないと慮りがちだが、紹介するか否かは相手が決めることなので、評価が高そうな場合は思い切って紹介を依頼して欲しい。

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アプローチはその効果的な方法を知っているかどうかで、案件化率に著しい差が出てしまうものである。
やる気はあったものの、成果の出ない方法を繰り返したあげく、成果が出ないためにモチベーションまで落としてしまう営業パーソンがいかに多いことか。

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この連載の著者

エマメイ先生(大塚 寿)

1986年、株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。サンダーバード国際経営大学院でMBA取得後、営業研修を展開するエマメイコーポレーションを創業、現在に至る。著書に『リクルート流』(PHP研究所)、「オーラの営業」(Nanaブックス)、累計28万部のベストセラー『40代を後悔しない50のリスト』シリーズ(ダイヤモンド社)など。

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