アプローチ準備 概論

営業戦略立3つのアプローチ! 顧客分析・商材理解・商談シナリオ

商談を効率的にする営業戦略の立て方

「営業戦略」というのは、簡単に言ってしまえば“受注するための作戦”になる。 ライバル企業がひしめく中で最後まで勝ち抜いて受注にまで持っていけるかどうかは、この「営業戦略」で決まってしまう。

戦略、作戦という意図がないまま、ただ漫然と営業をしていても業績が上がるのは独占市場だけなので、基本的に民間企業には「営業戦略」が不可欠になる。

「営業戦略」の立て方は、「受注確率を最大化するには自社や自社商品・サービスの強み(競争優位性)をどの領域で発揮させればいいか」を考えることからスタートするのが基本だ。

要は「何を武器にどこで戦うか」を決めることが営業戦略の根本概念というわけだ。
「どこで戦うか」を決定するためには、市場や顧客についての情報をどれだけ広く、深く知っているかがポイントになるし、「何を武器に」という意味では自社や自社商材の深い理解が不可欠となる。

もっと言えば顧客ごとにニーズが微妙に異なるため、そのニーズの真っ芯を射貫くためには自社商材をどういう「切り口」で訴求し、どういう流れで営業を進めていけばいいかという戦略シナリオの立案が必須なのだ。
よって、営業戦略は以下の3要素で立案したい。

1.顧客についての把握(情報収集・顧客分析)

2.自社商材についての把握

3.商談シナリオの作成

1.顧客についての把握(情報収集・顧客分析)

成長期から成熟期に入って久しい日本は完全に買い手市場となり、企業間競争はますます激しさを増している。
また新興国の安価な製品も年々品質を高めていることから、営業戦略においても品質、機能特性、価格以外のところで打ち出す強みが求められるようになってきた。

しかし、革新的な技術や機能特性を持った競争力のある製品などにお目にかかることも少なくなり、各社とも差別化ができない同じような機能、品質の製品を、これまた同じような価格で営業しているので、「いつものメンツでいつもの競争」が常態化しつつある。

その競争の中で、関係者は“自社の製品やサービスが競合と機能特性も、品質も、納期も、価格も同程度の場合、相手のことをより深く知っている企業が勝つ”ということを学んだ。
そこが「提案営業」「ソリューション営業」が台頭する伏線だったが、相手のことをよく知らないとそもそも魅力的な提案なんてできない。

そこで、顧客やクライアントの業界情報、企業情報収集がそれまで以上に求められるようになり、業界分析、顧客分析を行った上での「営業戦略」の立案が業績を左右するキーファクターとなったのだ。

業界分析・顧客分析の方法

自身が担当する業界、もしくは担当する企業が属する業界についての情報を集め、その情報を分析するところから営業活動がスタートすると心得て欲しい。

業界の定番はいわゆる証券取引所で用いられている証券コード協議会が分類した「33業種」だ。しかし、これだと「保険業」という分類に「生保」「損保」双方が入れられ、「情報・通信業」に「IT業界」「システム開発」「通信キャリア」などが一括りにされてしまうので、営業的には使いにくい。

そこで、「就活」で用いられる媒体による業界区分を用いると60弱に分類されるので、業界分析や業界研究には使いやすくなる。
もちろん全業界を分析するのではなく、自分が担当する業界、担当企業が属する業界だけでいいが、業界分析、顧客分析の方法については次の3つのステップで進めたい。

1)アウトラインをつかむ

文字通りどんな業界なのかの概略を把握する。
よく使われてきたのは就活用「30分でつかむ~」「2時間で分かる~」といった業界本だったが、今では「化粧品業界」と入力すれば簡単にネット検索できる時代になった。

2)業界に影響を与える環境変化を押さえる(PEST分析)

PEST分析というのは、Politics(政治) Economy(経済) Society(社会) Technology(技術)の頭文字を取った名称で、便利なフレームワークの定番として世界中で使われている。
この4つの切り口で直近の環境変化から業界を分析したり、変化を推測すると短時間でロジカルに分析をすることができる。

3)業界としての課題を知る

例えば、「銀行業界」であれば、“超低金利+ネットバンキングの普及+ネット決済の普及によるビジネスモデルが踊り場を迎えている”等、業界としての共通課題は把握しておきたい。その精度が高ければ高いほど、顧客は聞く耳を持つ。

情報収集の方法

「情報収集が重要なことは分かるが、具体的に何をどうすればいいかが分からない」という声をよく耳にするので、情報収集の前にやっておきたいこと、有効な情報源などを含め、代表的な10の収集法を下記に紹介しておく。

1)典型的な課題を推測

2)同業からの類推

3)社内情報の収集

4)専門誌(紙)、ネット情報、TV番組などメディアからの情報

5)投資家筋、銀行筋、証券筋といった関係者からの情報

6)社内勉強会

7)情報交換、懇談会

8)関係者からヒアリング

9)高校、大学の同級生からヒアリング

10)中期経営計画、有価証券報告書、IRレポート、HPから把握もしくは類推

ニーズを探るための5項目

顧客ニーズには「顕在的ニーズ」と「潜在的ニーズ」があるが、前者は既に顧客が認識しているニーズであり、後者はその時点では認識していないが、指摘されたり、問題提起されたりすることによって「確かに」と顕在化するニーズのことである。

「顕在的ニーズ」に対する営業は競合が多く参入するが、「潜在的ニーズ」に対しては単独で営業できたり、コンペになっても先発性の利益があるため受注率が高くなったりというメリットがある。

ニーズを探るという意味では、文字通りに「ニーズを探ろうとする」より、下記の5つに分けて掘り下げていった方が精度の高いニーズを掘り当てることができる。

1)経営としてのニーズ

2)事業部、部門としてのニーズ

3)業務、プロセスの中でのニーズ

4)製品・サービスに求めるニーズ

5)表面のニーズと背後にある真のニーズ

2.自社/自社商材についてきちんと把握

様々な顧客の顕在ニーズや潜在ニーズ、あるいは課題に応じて、自社商材がいかに役に立つかをアピールするためには、まずは自社や自社商材を分析してその場に応じた最適な切り口を作り出すことが必要になる。

売れる営業の極意は「顧客のニーズや課題という的のど真ん中を、自社商材の強みで射貫くこと」である。そのためには沿革やポリシーを含め、いかに自社や自社商材を魅力的に語れるかが重要で、日常的に理解を深めておきたい。

自社分析をして、自社の強みを把握しておく

実は、「これといった強みはない」と思っていて、自社の強みが語れない営業パーソンが少なくないのだが、こんなもったいないことはない。

会社に強みがなかったら、既に存在していないので、どこかにキラリとした強みがあるはずなのだ。どうしても自社の強みを発見できない場合は社史沿革をじっくり見直して欲しい。

次のような視点で社史を見つめると強みに気づきやすくなる。

1)創業のきっかけ

2)何を武器にしたから、今日まで存続できたのか

3)どんな製品やサービスを、どこと競合して、どんな顧客に提供して成長したのか

4)風土
→どんな職場なのか

5)何を大切にしている会社なのか
→大切にしているコト
→大切にしているモノ

自社の商材についてきちんと把握・準備をしておく

自社製品やサービスの「強み」をあぶり出すための商材分析のためには、以下の“マーケティングミックス4P”のフレームワークが便利だ。「顧客がどんな恩恵を得るか」に焦点を当てて、顧客目線の表現を考えるのがコツになる。

1)Product(製品・サービス)

「どんな強みや特性」「どんなブランドイメージ」「どんなコンセプト」といった切り口までは分析しておきたい。

2)Price(価格)

ここは「どのような価格戦略」、つまり高価格帯ゾーンが得意なのか、低価格帯ゾーンで勝負しているのかという、ポジションは表現したい。

3)Place(チャネル等)

性能や価格で差がでない場合、納期や在庫の融通性が勝負のポイントとなることが多いので、「商流、チャネル上」優位に立てる強みも見出しておきたい。

4)Promotion(販売促進等)

「営業戦略」自体がこのPromotionの差別化のポイントになるわけだが、他にも展示会やセミナー、広告、販促活動、広報活動の中での強みも意識したい。

他にも「SWOT分析」「3C分析」など自社の商材を客観的にポジショニングできるフレームワークがあるので、当講座の本文で紹介していく。

3.商談シナリオの検討

収集した顧客の業界情報、顧客情報の分析結果をベースにして、自社商材が優位に立てるであろう営業の「切り口」を設定することから商談シナリオの検討をスタートしたい。

結局のところ、顧客と営業パーソンとの間には“コミュニケーションしか存在しない”ために、その「切り口」は概念から一歩進めて口語のフレーズ、営業トークになっていた方が案件化率、受注率とも高くなる。

もちろん仮説ベースで構わないので、まずは全体的な商談シナリオの流れを作ってしまうのがコツだ。

ちなみに、最初から楽観的なシナリオと悲観的なシナリオの2種類を作っておけば必ず現実はその間を進み、すべてが想定内で推移するので、結果的に「売れる営業」となる。
ザックリと商談シナリオ設定の流れを紹介すると以下のようになる。

1)業界分析、顧客分析、自社分析を踏まえ、訪問前に営業の切り口を仮設定する

2)相手が持っているであろう課題、顕在的ニーズ、潜在的ニーズを予測する

3)自社商材の強みを相手に分かりやすい表現や事例で補強する

4)相手が興味・関心を持つであろう事例を準備する

5)相手からの質問を予測し、想定問答を準備する

6)顧客のネガティブな反応のパターンを予想し、対処策を想定する

7)提案に必要なヒアリング項目決める

8)何の話になったら、どの営業ツールを使うか、どの資料の何ページを使うか準備する

9)もらいたい宿題、次回訪問のテーマを複数準備する

10)全体を通してこの商談の「受注の決め手」が何になるのかを予測する

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この連載の著者

エマメイ先生(大塚 寿)

1986年、株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。サンダーバード国際経営大学院でMBA取得後、営業研修を展開するエマメイコーポレーションを創業、現在に至る。著書に『リクルート流』(PHP研究所)、「オーラの営業」(Nanaブックス)、累計28万部のベストセラー『40代を後悔しない50のリスト』シリーズ(ダイヤモンド社)など。

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