自分の傾向を正しく理解する
「自分は営業に向いていない」と悩んでしまったり、とうとう耐え切れなくなって別の部署への異動を願い出たり、別の職種を求めて転職してしまう人がいかに多いことか。
最初にハッキリ言っておくが、「自分が営業に向いていない」という自己認識はほとんどあてにならない。
なぜなら営業パーソンの気持ちの浮き沈みは、業績、上司や職場、営業品目、市場、顧客といったことに大きく左右されるので、それらを十把一絡げにして「営業に向いていない」と自己判断するのは、そもそも誤っている。
とはいっても、「自分は営業に向いていない」と思っているのは現実なので、今回はその対処法について共有する。
当連載の「営業補完スキル・営業の心構え」のカテゴリーでも「自分は営業に向いてない」と思ったら、7つ以上のキャラを持とうという方法を紹介したが、ここでは全く別の方法を紹介したい。
その方法は「自分は営業に向いていない」という大雑把な感覚ではなく、「なぜ、営業に向いていないのか」という自己分析でもなく、まずはニュートラルに「自分の特性や傾向を正しく把握すること」からスタートしたい。
特性という意味では、まずは自分自身の営業に活かせる「強み」と営業に支障をきたしてしまうかもしれない「弱み」を客観的に自己評価しておきたい。
例えば、「相手の真の課題を引き出すヒアリング力がある」「技術的なことも話せる」「パワポを駆使した相手に分かりやすい提案資料が作れる」「フットワークがいい」といったことが「強み」だ。
逆に「弱み」というのは「一方的にしゃべり過ぎて、相手の話を聞かない」「時間や納期、締切りにルーズ」「初めてのこと、新しいことに躊躇してしまう」といったことだ。
「営業に向いていない」と思っている営業パーソンは、「弱み」はさて置き、まずは営業の武器となる「強み」を発見し、そこを磨きこむことからスタートしたい。
実は、「営業に向いていないんじゃないか」と思ってしまう営業パーソンへの特効薬は「業績」なのだ。
誰かの力を借りて上げた受注ではなく、独力で上げた受注が「頑張れば上手くいく」という自信と希望になりそれまでの“迷い”を消滅させる。
そんな簡単に「業績は上がらない」という営業特性があるのなら、「業績」の手前にある「案件数の増加」や「案件のステータスのランクアップ」といった成長感が持てる対象で代替したい。
「弱み」に関しては、それらを補って余りある「強み」の総計があるなら、そのまま温存する方法もある。
しかし、なんらかの「弱み」が致命傷になって行く手を阻んでいるなら、その「弱み」を分析、分解し、独力や上司、周りのサポートを借りながら、どこまでなら克服できそうかという線を明確にし、「弱み」を少しでも改善することにチャレンジしたい。
基本的には営業は「強み」で勝負するものなので、特に「自分は営業に向いていない」と感じる人には「強み」をより意識した行動を展開して欲しい。
次に自分はどんなことがあるとモチベーションが上がるのか、逆にモチベーションを低下させる要因は何なのかという自身の傾向も知っておきたい。
そうした傾向が分かると、セルフ・モチベーション・コントロールがしやすくなるからだ。
実際、モチベーションを上げる要因、下げる要因にはかなりの個人差があるし、更には「自分はどんな時にモチベーションが上がる人間なのか」なんて研修にでも参加しない限りは考えもしないだろう。
確かに、「やることは増えたのに、年収は減ってしまったのでモチベーションが下がった」といった感じでモチベーションの低下は自覚するものの、そこには「自分は正当に評価されないとモチベーションが下がる人間だ」という自己認識までは至らないことが多い。
逆にそういう人は、自身の業績が正当に評価されればモチベーションを維持できるので、その傾向を、「評価を高めるために今以上の業績を上げよう」といった具合に、自身の意識を変えることに活かすことができる。これがセルフ・モチベーション・コントロールだ。
もちろん、自分ではそうした傾向に気づけない場合は、上司や元上司に客観的な意見を聞くなどして、自身の傾向を正しく理解しておきたい。
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