顧客から頼られるための得意技を持つ
いったいどうすれば顧客から信頼されるのだろうか? 顧客からの紹介による他部門や他社への横展開の受注率がずば抜けて高いのは想像に難くないが、そもそも信頼を得ていなかったら紹介依頼を切り出すことすらできない。
ましてやアップセルに至っては信頼関係がないところには成立しないことから、今回は誰でも真似できる顧客から頼りにされる営業パーソンの武器を紹介する。
顧客とのよいリレーションには必ず「きっかけ」がある。何らかの「きっかけ」があって、顧客が営業パーソンを頼りにするようになり、その関係がどんどん深まっている状態を「信頼関係」と呼ぶ。
つまりは、いくら「営業には顧客との信頼関係が大事です」と唱えたところで、顧客のほうが頼りにしてくれなかったら、絵に描いた餅だ。
ではその信頼関係の素(もと)になるモノとはいったい何なのだろうか。
ここでは、その中の代表的なモノを5つ解説したい。信頼の源泉はこれらの5つのいずれか、または組み合わせなので、持っている要素、持てそうな要素があればどんどん活かして実績につなげて欲しい。
例えば初対面であっても、顧客に役立つ情報が提示できたとしたら、相手は営業パーソンを「会う価値のある人」とみなす。
初回訪問であっても相手が抱える問題や課題の真っ芯を射貫くような解決策、解決のヒントになるような情報が示せれば、次から相手は「頼りにするスタンス」で、商談に臨むはずだ。
もちろん1発で相手の信頼を勝ち得ることが難しいなら、数で勝負する手もある。1つひとつの情報にはそれほどのインパクトはなくても、「常に何か新しい情報をもたらしてくれる人」を目指して、訪問の度に相手に役立ちそうな情報を提供し続けるのも、効果は絶大だ。
上記のように相手に役立つ情報であれば、確実に信頼関係構築の糧になるが、その時は直接役に立てなくても相手から「あの営業パーソンは情報量が多い」と印象づけられれば、頼りにされる存在になれる。
しかも、その情報は独力で集めなくても、情報が集まる社内外の「情報のキーパーソン」を押さえておけば定期的に最新情報を入手できるし、更には事情通と呼ばれる人との情報交換により情報量を倍増できる。
情報というものは使い回せるものなので、コンプライアンスに反しない限り、A社で聞いた話をB社、F社のM部長から聞いた話をK社のY部長へ話すことが可能で、その循環の中で情報量は加速度的に増加していく。
いわゆる人脈、人的ネットワークも顧客から一目置かれ、口には出さなくても頼りにされる要因になっていることが多い。
シリコンバレーでAI関連の投資先をウォッチしているベンチャーキャピタル、労使関連に強い弁護士、最新の人事評価制度に精通しているコンサルタントといったハイエンド系ばかりが、有用なネットワークではない。
普通でいいのだ。自分の人脈の範囲内で新しい取引先を紹介したりするレベルのほうが現実的であるし、プライベートで気の利いた店やいい家庭教師を紹介するといったことでさえ信頼関係の素になるので、自分自身の人的ネットワークも意識して育てていきたい。
ちなみに出身大学や出身高校の同級生や先輩、後輩、部活関連が人的ネットワークの基盤となることも少なくないので、大切にすべきだ。
専門分野がある営業パーソンは間違いなく有利なため、営業管理職の半数以上が技術者出身といった業界もある。技術者時代に培った知見と経験を顧客が頼りにするからだ。
その得意分野は仕事に限ったことではなく、学生時代に打ち込んだ野球やサッカー、音楽などに範囲を広げても構わない。
元甲子園球児のスラッガーが飛ばす320ヤードのドライバーはゴルフ好きなら一度は見てみたいだろうし、相手の会社が草野球のリーグに参加していたりすると、試合の助っ人として頼りにされたりするものだ。
熱意というのは人柄の一部分かもしれないが、場合によっては営業パーソンの熱意を信頼の根拠とする顧客がいる。
提案内容や製品の機能、品質、価格が同じなら、営業パーソンの熱意で最終決定を下すという判断だ。
心理的な判断というより、営業パーソンにここまでの熱意があるなら、「何かあっても逃げずにやり遂げてくれるだろう」という合理的な判断に基づく。
以上が顧客との信頼構築のための5要素になるが、すべてが揃っている必要はないので、「できそうな」モノから試してみよう。
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